零夜
この文を読んでみようという気になってくださった方に感謝です。
いきなりで申し訳ないですが、これは趣味で書いているにすぎませんので気が向いたときにのみ書かせて頂きますので完全不定期更新です。そもそも続くかどうかも分かりません。
そんなただの妄想ですが、万が一お気に召すようなことがあれば幸いです。
まあ、楽しんでいってください。
表の世界で幻想と化した者たちの住まう世界、幻想郷。その中の人里に、とある店がある。
その店は物を買う店ではない。者を買う店だ。より正確に言うなら、ある者の時間を買う店だ。
商品は店主であり、唯一の従業員である少年の時間。少年は戌の刻から翌日の卯の刻まで、つまり一夜を売るのだ。
客はその一夜をどのように使ってもよい。何か手伝わせたいことがあるのなら手伝わせ、飯が食いたいなら少年に作らせ、酒の相手が欲しいのなら少年に酌をさせればいい。
もちろん、料理や酒代等の少年の時間以外に必要なものがあるときはその分別料金が必要になるのだが。
そして、少年の躰を求めるのなら、それもまたよし、である。
そんなこの店には看板すらない。故にこの店の名前どころか、この建物が店であることを知らない者がほとんどである。
所謂知る人ぞ知る、というやつだが、生憎とまともな人間の中でこの店を知る者はいない。知る「人」がいないのだから知る人ぞ知る、というこの表現は不適切かもしれない。
では何者がこの店を知っているのかというと、人の形を持っていながらヒトならざる者、人を超えた者たちである。
今夜もそんな彼女らを迎え入れて、少年、奏はいつもと同じように言う。
「ようこそ、夢一夜へ。今宵はどのような夢を見ますか。」
用語説明
・戌の刻、卯の刻…戌の刻はだいたい午後八時、卯の刻はだいたい午前六時。とはいえ、時代によるが、江戸時代には日の出、日の入りを基準にしていたようなので、季節によって差が出るようだ。