レム睡眠
八、
奥のほうに進めば進むほど・・・・何かの叫び声は当然のように大きくなってきた。それにつれ、鉱石の量も心なしか、多くなってきているような気がする。
「・・・・・。」
普通、好奇心で命を落とすようなことはしないと思うが・・・・残念ながら俺はそんな男だ。と、いうわけで・・・・この音を確かめに言ってきます。
一気に音がするほうへ走り抜けると、そこには大きな空間が広がっていた。
そして、光を放っている鉱石に目が奪われていると・・・・俺の後ろで何かが落ちたような音がした。・・・・誰か、RPGをしていてボスがいるところに行ったら急に戻ることが出来なくなったということがないだろうか?今の俺の状況はそんな感じだ。とてつもなく大きな水晶みたいなものが俺の行く手を遮っていた。
「・・・・む、向こう側が透けて見えてるのにいけないなんてな・・・・」
あっち側は分かるのに・・・行くことは出来ない。更に、そんな俺に追い討ちが続く。
ギシャァァァァァ!!
どこぞのドラゴンがお目目をパッチリ開け、やってきた勇者でも倒そうかといったときに鳴く声が再び、俺の耳に届いた。・・・・・正直、振り向きたいとは思わない。しかし、このままあっちが見える水晶を眺めていてもいいことなんて一つもないに決まっている。現実逃避をしていてもろくなことがないのはこの前の加奈の時によぉく、わかった。あの後は皆から尋問まで受けたのだ。
「・・・・だ・る・ま・さんが・・・・転んだ!!」
振り返ってみた、そこにはすけるような肌を持ったかっこいい、龍がいた。
・・・・その数、二匹。顔が似ているので双子さんのようだ。うん、顔が瓜二つに見えるね・・・・そして、体が透き通るように見えるから・・・・いやいや、意外とあっち側も透けて見えてるから・・・・うん、クリスタル・ドラゴンってやつですか?それとも、スケルトン・ドラゴンのほうがかっこいいか?
ギシャァァァァ!!
うぅぅ・・・こんなときはあれだ、こんな化け物を倒すには勇者の剣でもないとやってられん!!ここは友好関係を作るしかない!!
「・・・・だ、大丈夫だ!俺はお前たちに危害を加える気は・・・お前たちに隙が出来るまでそんな気はない!!安心して結構だ!!」
龍の返答は・・・・口から吐いた光り輝く水晶だった・・・・。遠慮なく、全て俺に直撃。・・・・心に響く、嫌なものです。・・・・・ガクリ・・・・。
「・・・・うむ、久しぶりじゃな、輝よ。」
「ああ、久しぶりだな、爺さん、菜々美。元気にしてたか?」
「うん、私は元気だよ?でも、兄さんってば、また死んじゃったの?」
「・・・・全く、わしらに出番をくれるのは嬉しいのじゃが・・・・あっさりダウンするもんじゃない!!立て、立つんだ輝!!」
「そうだよ、がんばって、兄さん!!」
「・・・・ちょ、そんな押すなって!!う、うわぁぁぁぁ!!」
「輝、久しぶりに呪文でも唱えるんじゃな。」
「く、呪文、忘れちまったんだよ!!『我が名において命ずる、心の姿を見せよ!!』だったかな?」
「よし、多分、それであってると思うぞ?」
二人に半ば強引に追い出され、俺は再び、娑婆の世界に戻ったのであった。正直、もうちょっとダウンしていたかった・・・・。だって、あの龍怖いんだもん!!
そして、俺の目の前には一人の美少女が鋭き刀らしきものを持ってたたずんでいる。
「・・・・ほぉ、お主、我が姉妹の攻撃を食らってもなお、立っていられるか?」
「へっ、俺としてはもうちょっと死んでいたかったんだがね、人間ってのは生きるために生まれてくるもんなんだよ!」
もう一匹はいない。どうやら、もう一人の侵入者を排除しに行ったようだ。く、ここはさっさとけりをつけないと・・・もしかしたら、黒河が危険かもしれない。
「・・・・征くぞ!!下郎め!!」
「上等だ!かかってこいや、よくもとんでもない目に合わせてくれたな!!その仕返しはプレゼントして返してやるぜ!!」
光を放つ水晶の欠片がまっすぐ、俺を狙う。しかし、爺さんと菜々美が応援してくれたのだ。やられるわけには・・・・いかないんですよ、透き通るような肌を持つ、ドラゴンさん?こっからは・・・ちょっと、いたずらしてやるぜ!!
「・・・・よ、は、と、」
飛んできたものは全て避けきれた。・・・・そして、物干し竿を二つに折ったような長さの水晶らしき物騒なものも避けることに成功。
「・・・しまっ・・・」
よもや、さっきは成功したので避けられるとはまったく思っていなかったらしい、龍は制御できなくなった自分の体重のせいで前に思いっきりつんのめった。
そして、その龍の行き先には鋭くとがった水晶が牙を向いていたのであった・・・・。
「・・・ちぃ!!」
結局、俺は敵の龍に手を差し伸べてしまったのであった。後ろから抱きしめるような感じで助けることが出来た。・・・・掴んだところはちょっと危ないか?まぁ、俺のおかげによって、とがった水晶は彼女ののどもとでストップしたのであった。・・・・うん、彼女の命も救えたし、俺もなかなかいい思いが出来た。
「・・・・いつまで、触っているんだ?」
「あ、すまん。これは事故だ。」
掴んでいた手を離すと、さっさと俺から離れた。そりゃそうだ、あいてはまだ、どこも怪我なんてしていないしな・・・・。
「・・・・なぁ、俺の負けでもかまわないから、話を聞いてもらいたいんだが?」
「・・・・よかろう・・・」
こうして、何とか話を聞いてもらえることに成功したのであった。




