貴女の料理は怖すぎです。
五、
うぅぅむ。困ったもんだ。いや、何を困っているかというと・・・・。
「ほら、輝。手伝ってよ。」
俺は今、加奈の助けをしている。何をだって?料理さ。おばさんに今日の夕飯の当番を言い渡された俺と加奈は一緒になって奮闘している。これがまた、大変だ。しかし、俺には料理当番の権利が存在していないみたいで、いわば・・・サブパイロットみたいなものだ。横からアドバイスを言ってやるぐらいだ。
「・・・・加奈、それには卵は入れないみたいだぞ?」
「え?違うの?」
加奈は今、何を作っているのだろう?さっき見たときは魚の骨のスープと豚骨スープを混ぜていたのだが?その後は野菜をぶち込んでいた気がするが・・・一体、何を作る気なんだ?一応、色々言ってみたが・・・・いつも加奈が先に入れてから気がつくので俺は別にいなくてもいいんじゃないかといった感じであった。
「加奈、一旦それは捨てたほうがいいんじゃないか?」
「ええっ?もったいないわよ!!ホワイティーにあげればいいじゃない!!犬は何でも食べるんでしょ?」
ホワイティーとは確か、俺の家にいる犬だ。近頃、見ていないのでどこで何しているかは謎だ。
「・・・・・加奈、そんなことは言っちゃ駄目だ。いいかい、自分で責任持って処理しないといけないんだぞ?」
「・・・わかったわよ。」
うんうん、わかってくれて俺は嬉しいよ。そんなの夕食として食べた日には、もう一度、昇天しそうだからね。
「じゃ、責任もって私が飲む。」
「そうしなさい・・・・いや、やめとけ!」
ううむ、なんてチャレンジャーな野郎だ。危険を顧みずにそんなことをする人を見るのはこれが初めてだ。だが、変なものを食うのは葵だけでいい。
俺は加奈からスープを取り上げ、捨てようとする。
「ちょっと、何やってんのよ!!」
「見ての通り、魔女スープの処理だ。こんなもんをお前に飲ませたら大変だからな。」
何故か、加奈は押し黙った。しまった、言い過ぎたか?
「・・・輝、私を心配してくれてんの?」
「ああ、当然だ。お前は俺の妹みたいなもんだからな。」
顔を真っ赤にしている加奈。うん、こういう顔はかなり可愛いね。さて、一から作り直しだ。
「あ、輝・・・・。ありがとう。」
「?ああ、そりゃどうも。ほら、早く作らないと皆帰ってくるぞ?」
ぼけっとした加奈だったが・・・・力強く頷いて残っている材料を包丁で切りにかかる。しかし・・・・加奈はこんなに料理下手だっただろうか?
そして、加奈とともに奮闘した結果・・・・。まぁ、あれだ・・目をつぶって鼻をつまめば食えるかもしれん・・・・。
「・・・・・加奈、失敗はよくある。そう、がっかりするんじゃない・・・」
「・・・・そうよね。」
そんなにショックだったのか?顔、真っ赤になってんぞ?ま、まさか・・・
「加奈、料理酒どこにやったんだ?」
加奈の手には料理酒が握られており、中身は・・・・ほとんど減っていなかった。
「ちょ〜っと、飲んじゃった!!てへぇ!!」
どうやら加奈は酒に弱いようだ。うん、足元ふらふら・・・顔はお猿さん・・・そしてこっちにやってきやがった!!
「あきらぁ!いい子いい子してよぉ?」
「はぁ?頭撫でろってか?」
加奈は俺に抱きつくようにもたれかかっている。全く、龍は酒に強いんじゃないのか?ヤマタノオロチだってこのくらいじゃよわねぇよ。
「・・・してくれなきゃ泣いちゃうぞ?」
お前はあのねずみになった赤ん坊か?はぁ、しょうがない。
「・・・ほら、いい子いい子。」
「えへへ・・・」
やれやれ・・・いつの間にか精神年齢まで幼くなってたのかね?そんなに長い間いなかったというわけではないのだが・・・。
「輝、寂しかったよぉ・・・」
「・・・・ああ、すまん。」
泣きながら寝てしまった加奈をベッドに連れて行き、寝かせる。
・・・・三ヶ月か・・・意外と長かったのかもしれないな。
本当に、皆には迷惑をかけたもんだ。
しかし・・・・結局俺は戸籍上死んだことになっているのだろうか?それに、学校に行けるのか?そして、俺以外の皆が口をそろえて穂乃香ちゃんなど知らないといっているが・・・・あれはどうなったのだろう?まぁ、今のところはおいといて、俺が今するべきことは・・・・後片付けだ。あんな汚いのは久しぶりに見たな。う〜ん、困った。俺は眠っている加奈の顔を見ながら悩んでいたのだが・・・・。
「輝、料理は出来たのか?」
「ただいま、輝さん。」
「輝君、ただいま。」
他の皆が帰ってきたので俺は寝たふりをしたのであった。現実逃避完了!
今回は加奈の話になりました。まぁ、大体予想すればわかりますが、次は碧さんの話です。御感想のほう、よろしくお願いします。




