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俺は足遅いの!

二十七、

 俺の後ろに見えるのは残像を残しながらついてきている麒麟である。紀伊とは途中の道で別れた。


「質量を持った残像だとぉ!?」


 俺はとある貴族の真似をしていってみたのだが・・・・うぅん、彼の心境がどことなく、分かる気がする。


「・・・・。」


 黙ってくるのがこれまた怖い。手加減してくれているのは嬉しいだが、黙ってついてきているのでかなり恐怖がある。背中にいた小鳥は紀伊に任せた。


「そりゃぁ!!」


「・・・・。」


 俺は振り向きざまに延髄蹴りをお見舞いしてみたが・・・・お見舞いされる前に面会謝絶だった。あっという間に避けられ、残像に触れることも出来ない。ふ、動物愛護団体に捕らえられるのはどうやら俺のようだ・・・。


「やるじゃな〜い!だけど・・・これならどうだぁ!!」


 俺は近辺に落ちている石を投げまくった。ああ、やったなぁ、とあるゲームで・・・石を投げるっていうコマンドしかしてなかったっけな・・。まぁ、それはいいとして、俺は適当に石を投げた。これは、どうせあたらないのは日を見るよりも明らかなので囮だ。

 俺は石を投げ終えると、いつもの倍のスピードで一本道を走り続けた。何故なら、俺たちが目指していた『聖地』まであとわずかだったからだ。聖地まで、走っていけば五分という看板まで立っている。つまり、無謀な鬼ごっこだったが・・・少しは俺のほうにも分があるようだ。


「「「マスター、援護します!!」」」


「すまん、紀伊、小鳥、紀ちゃん。」


 俺と同じように石を投げたり砂を投げたり、はたまた狸を投げたりとさまざまな手伝いをしてくれた三人はいつの間にか俺より先の道に立っていた。つまり、俺の方向へと投擲してきているのだ。


「ががががががっ!!」


 残像を残せるほどのスピードのない俺は彼女たちが無邪気にかつ、俺想いの足止めたちは見事俺にヒットした。・・・全て。

 最後に、狸が俺の頭にヒットし、俺はその場に片膝をついた。


「マスター、大丈夫ですか?」


「・・・いや、限界だ。あの足止めがなければよかったんだが・・・。」


 最後の狸は効いたな・・・。それに、お遊びも飽きたのか麒麟がその角を俺の心に向けている。一度、女の子からしてもらいたい仕草だなぁ。

 突進してきた麒麟を避ける力も残っていない。


「危ない、マスター!!」


「紀伊!!」


「・・・・!!」


 俺と麒麟の間に紀伊が割り込んできた。誰にも、麒麟と紀伊の接触を防げないと思われたが・・・俺だけが紀伊を守ることが出来た。そして、俺は紀伊を助けることとなった。


「マスター、やっぱ怖いです!!」


「なにぃ!!」


 紀伊は俺を掴んで麒麟へと放り投げた。勿論、空中から串刺しにしようとしていた騏麟は避けることなどできず、本来の目的・・・つまり、俺を刺すことに成功したのであった。


「ぐふぅ!!」


 ああ、なんだか・・・・意識が遠のいてきた。ふ、女の子を守って死ねるなら本望だぜ・・・まぁ、どちらかというと無駄だったような感じが否めないのだが。


「マスター!!」


 近寄ってきてくれた紀伊だが、その前に病院にでも連れて行ってもらいたい。


「笑ってください、マスター!!ほら、私が今からギャグを言いますから!マスター、この小説にはもう、あきマスター(あきました)。」


「・・・・・。」


 パト○ッシュ、僕はもう疲れたよ。色々と・・・。こうして俺はその場で意識を失ったのであった。


「・・・・ん?」


「あ、輝さんが目を覚ましました!!」


 紀伊か?と思ったが、俺の隣にいたのは目を真っ赤にした葵だった。その隣には加奈と碧さんがいる。


「・・・・俺はどうしてたんだろ?」


「輝さんはおばあさんの剣に刺されたんですよ。」


 ああ、思い出した。そういえば俺は刺されたんだった。いやぁ、痛かったなぁ。どうやら、こちらの体の受け入れが完了したみたいだな。


「輝さん、『聖地』には行って来ました?」


「いえ、まだです・・・もう少しでいけたんですけど・・途中、ギャグに殺されました。」


 頭にはてなマークを浮かべる三人に俺は曖昧な笑いを残して俺はベッドから抜き出ようとしたが・・・。


「ぐぅ!!」


 麒麟に刺された箇所にはそれらしき傷が残っており、俺はちょっと嫌な感じになった。く、あのギャグの恐ろしさが再び戻ってくるぜ・・。


「輝さん、大丈夫ですか?」


 俺は首を振って再びベッドへと体を移して俺を追い詰めたギャグを思い出した。


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