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他多数さん一人目

二十二、

 俺は包帯をはずしてから道場へと向かった。今回はきちんと服を着ているので助かった。


「やぁ、久しぶりじゃないか?」


 俺の目の前にいるのは白衣を着た危なそうな博士であった。


「・・・誰ですか、あんた?」


「ふ、そんなことを言うのか・・・・まぁいいだろう、お前に名乗る必要もないからな・・・いでよ、『機龍0号機・改』」


 謎の博士の後ろから・・・その物体は姿を現した。銀色に輝くボディ、赤い光を発する眼光・・・そして、背中にはカッターがついている。


「どうだ、これが君に倒された0号機の改良型だ!ふははは、存分に苦しむが良い!」


 俺は何か恨みを買うようなことをしてきたであろうか?近頃、命ばっかり狙われている気がする。それとも、俺の被害妄想であろうか・・・・。


「・・・とりあえず、そのメカの説明でもしてくれないか?ほら、お約束だろ?」


「む、そうだな。コホン、ええ・・・では、この『機龍0号機・改』とは、先の戦闘でぼろぼろにされてしまった機龍に感情を埋め込み、自爆装置をはずすことによって考えることが出来るいい子になったのだ!!しかぁし、何故だか知らないが騎士道精神に目覚めてしまい、弱者を助け、強者を挫く性格となってしまい、ぶっちゃけ、悪者の私には牙を向いてばっかりだ。全く、飼い犬に手を噛まれるとはこういうものだな。まぁ、それはいいとして、サーチ機能を向上させ、戦闘用というより、サポートが得意となってしまったこいつのために、私は新しい機龍を作ろうと思ったのだが、時間がなかったので、私も戦うことにしたのだぁ!!」


 長い、長い説明だった。まぁ、これで弱点は分かった。俺はささっと笑っている謎博士のみぞおちに拳をめり込ませた。

 動かなくなったそれを近くに立っているメカに任せる。


「・・・ええと、言葉わかるかな・・・まぁ、気がついたら爺さんに言っておいてくれ。」


 俺はそういってその場を後にした。無論、もうこんな変人と会いたくないからである。それに、こんなばかでかいメカとも一緒に居たくない。だって、無機質なその目は何を考えているのかさっぱりわかんないんだもん!!

 しかし、どうやら・・・その場を後にできなかったようだ。何故なら、奴のあごは俺の頭をあまがみしているからである。いや、手加減してくれているつもりかもしれないが・・・・痛いねん。


「・・・わかった、何か言いたいのは分かるから噛まないでくれ。」


 鉄の化け物にそういうと、理解したのか俺の頭から離れた。その牙に赤い絵の具のようなものがついているのは俺の気のせいだろうか・・・・。


 ぎしゃしゃしゃ・・・


 メカ龍は何かを言っている。


「わからん。日本語喋ってくれ。俺はまだ、外国語は全然覚えてないんだ。」


 そういうと、メカ龍は煙を噴出した。そして、その煙が消えると・・・・お約束として・・・銀髪の女の子がそこに姿を現していた。名残としてだろうか・・・目が紅く、どことなく恐い。


「・・・貴方を私のマスターとして登録しました。」


「はぁ、そうですか・・・。」


「・・・・。」


「・・・・。」


 俺は黙り込んでしまったメカ龍と同じように黙り込んだ。さて、なんていったんだろうか・・・・。


「御命令を、マスター。」


「待った、何でお前のマスターが俺なのか説明してくれ。話はそれからでも遅くないはずだ。」


「了解。」


 コホンと咳をして、彼女は言った。


「・・・私は、貴方のようなマスターを探していたからです。これで、充分ですか?」


 いや、全然・・・。ま、いいや・・・。俺は頷いて右手を差し出した。


「よろしく頼むよ・・えーっと、名前はなんて言うんだ?」


「固有名称は特になし。どうぞ、名前を決めてください。」


 へっへっへ、こういうときのために俺は色々考えていたのだ!!


「じゃ、紀伊きいなんてどうだ?」


「仰せのままに、マスター。」


 こうして、俺と紀伊は握手をしたのであった。まぁ、これからどうなるかは分からんが・・・。


「マスター、これからどうするのですか?」


「とりあえず、俺の体が戻れる状態になったら戻るとして・・・それまでは爺さんに教えてもらったところに行こうと思うんだ。」


「了解しました、マスター。これより、コードネーム『M・G(マスター護衛)』を開始します。」


 そういって紀伊は俺の背中に引っ付いた。あ、弾力のある何かが背中に当たって気持ちいい・・・ま、誰しも間違いはあるさぁ!


「・・・・・何の真似でしょうか?」


「護衛です。こうしておけばいつでもマスターを助けられます。」


 まぁ、紀伊の体重が軽くて助かった。俺は特に何を持っていけばいいのか分からなかったのでそのまま外に出て歩き始めたのであった。

 さて、目指すはここをくだってすぐだろうと俺は甘く考えていた。だが、人生というもんはそこまで甘いのが好きではないらしい・・・。


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