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犯罪防止運動

二、

 私に優しくしてくれたあいつはもう、死んでしまった。あの時、私がとめればよかったのだが、できなかった。いまさら、どうしようもないと分かっているが、そのことを考えると心が沈んでしまう・・・本当に、あのスケベな男は死んでしまったのだ。


 私にとって、弟のようだったあの少年は死んでしまった。面白い性格で、かなりの無茶をするような子でもあったが、ちょっとスケベであった。私としては、もうちょっと彼の成長を見ていたかったものだ。もしかしたら地獄にいってる可能性もあるが、彼なら頑張れるだろう。


「がぁぁぁっぁ・・・」


 ああ、疲れたぁ。てか、死に掛けたぁ。復活早々、ほんとに死に掛けたよ。しかし、こんな体じゃ、人前にも出られないね。どうしたもんかなぁ・・・・。

 とりあえず俺は、自宅に帰ることにした。だが、先ほども思った通り・・・・この姿で道を歩いていたら動物園か謎の研究所に送り込まれるだろう・・・。さて、困った・・・・とりあえず、人通りのめっぽう少ないこの大きな橋の下で生活していれば大丈夫だ。

 そこは、俺が葵と出会った場所でもあった。そう、ここが俺の高校生活の中で一番、驚いた場所だ。あれから結構死んだほうだし・・・・今では人間の形すらしていない。ちなみに、葵というのは俺と一緒に住んでいた龍だ。他にも龍はいた。


 ぐぅぅぅぅぅぅ・・・・


 腹も減ったし・・・・何か食べたいなぁ・・・あの時は確か、俺が葵にパンをあげたんだっけ?はじめは食われると思ったけどなぁ・・・。でも、龍って何を食べるんだ?ザリガニ?

 そんなことを考えていると、誰かが向こうからやってきた。やばいやばい!!動かなければばれないだろうが・・・・もしかしたら気がつかれるかもしれない。


「・・・おら、黙りやがれ!!」


「むぐぅぅぅ!!」


 隠れようとしていた俺にそんな声が聞こえる。どうやら、誘拐のようだ、俺が過去にあった中で一番怖いいつかのおじさんよりはましな顔をしているが、今度は間違いなく、誘拐だ!!くそ!!どうすればいいんだ!!この姿で出たら大変じゃないか?

 俺が迷っている間に、その男は男の子を車に押し込めようとしている。

近所だから知っているが、この時間帯から後はなかなか人が通らない。

つまり、この現場を見ているのは俺だけかもしれないのだ。

俺は、意を決して橋の影から飛び出る。

そのまま飛び・・・って、俺って空とべたのね?しらなかったぁ。ま、おれはそのまま、背後から男に襲いかかる!!そして、男の首根っこを口でくわえるとそのまま川に放り投げた。すんごい高さまで上昇すると、そのまま男は打ち上げるのをしくじったような花火のごとく、川に向かってスピードを上げる。


「ぐぁぁぁ!!」


 男はそのまま川にドボン!はっはっはっは!!さっきまで溺れていた自分とそっくりだ。みんな、人を川に落としちゃ駄目だよ?お兄さんとの約束だ。

 俺は男が戻ってくる前に、男の子を縛っていたロープを引きちぎる。男の子は珍しいものでも見るような感じで俺を見ている。そりゃそうだ、龍は珍しいだろうな。


「あ、あの・・・助けてくれてありがとう!」


「ぐしゃぁぁぁ。」


 く、男の子が言っていることは分かるのに、俺はほとんど喋れてねぇ。もう一度、ひらがなから勉強するかな?いや、発音からはじめたほうがいいかもしれん。


「あの、僕・・・・今日のことは忘れないよ!!」


 男の子はそういうと走っていった。

うん、元気なのはいいことだが・・・・あまり無茶なことはするなよ?で、俺はようやく上がってきた誘拐犯を長い体で縛り上げ気絶させると、警察の前においてきた。それだけでは分からないと思ったが・・・・なんと、警察にちょうどあの男の子が来ていたのだ。俺はそのまま姿をくらますために空を飛ぶことにした。しかし・・・・これからどうしようか?この長い体を生かして、うなぎとして生活していこうか?いや、とりあえず、人間に戻る方法を見つけよう。

 俺はこれ以上人に見られないためにもとある場所にやってきた。

そこは、俺が加奈と出会った場所で、もう少し下のほうで碧さんと出会った場所に行くことができる。

加奈と碧さんと言うのも龍だ。

加奈は少々、いや、かなり強情なところもあったが、面白い奴だった。

碧さんは物腰やわらかな大人の女性といった感じの人だったが、どこか抜けていた。俺が今、身を潜めているところは黒くなった大きな木だ。これは、加奈と出会った時に加奈がこの木を大きな木炭に変えてしまった。ま、今ではいい思い出だ。しかし・・・困ったものだな。会いに行こうとしても、こんな姿だからなぁ。よし、夜になって会いに行くか!


 こつ、こつ、こつ・・・


 どうやら、誰かがやってきたようだ。誰かを引きずっっているようでもある。


「・・・よし、ここなら誰も来ないで楽しめるだろう・・・ぐふふふ。」


「むー!んー!!」


そいつは、ロープで縛った女の子を連れてきて何かをしようとしている。

・・・・いつの間に、俺の住んでいる町は犯罪の多い町になってんだ?・・・・悪い子にはお仕置きしなくては!!とりあえず、この悪人に責任とってもらうとするかな?俺は音もなく忍びより、今にも女の子に抱きつこうとしている変体さんの後ろに回りこむ。そして、ここでも長い体を生かして、奴の首に巻きつけて先ほどまでいた大きな木に思いっきりぶつける。ちなみに俺は悪いやつには手加減しない派だ。


 ぼきぃぃぃ!!


「ぐぁぁっぁぁぁ!!」


 そのまま、男は動かなくなり・・・・いや、殺してないよ?ただ気絶させただけだからね。まぁ、なんにせよ・・・これで二人目に姿を確認されてしまった。明日の朝刊にUMA扱いで新聞に出ることがあるかもしれない・・・・。

 ロープで縛られている女の子を助けてあげた。女の子は俺を恐怖の入り混じった感じの視線で俺を見た。


「へ、蛇?」


 ああ、いつかの俺みたいだ・・・・ということで、俺は首をおもいきり振ることにした。


「私を助けてくれたの?」


 頷く。そして俺は、女の子からさっさと離れてほとんど暗くなった山道を飛び始めた。今気がついたのだが、この姿なら道に迷っても空を飛んで確認することが出来る。しかしまぁ、葵たちが龍だったときに一度も空を飛んでいるところを見たことがなかったから龍はてっきり空を飛べないと思ってたよ。 

 俺は、そんなことを考えながら自宅へと向かって飛んでいくことにした。



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