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デート?

十九、

 そして、昨日から見たら今日、明日から見たら昨日がやってきた!俺はとりあえず駅前に行くことにした。既に手紙がないので予定時間が書かれていなかった手紙を見ることなく、早めに家を出た。

 駅前に行ってみると・・・多くの子供連れや俺と同じように待ち合わせをしている連中が結構いた。ううむ、確かに何か目印がないといけないかな?


「・・・お!あれかな?」


 俺から見てちょうど右のほうに当たるベンチに目印を持っている女の子がいた。青い服を着ていて帽子をかぶっている。ちょうど防止で顔が隠れているので顔は確認できないが・・・・なんだか何処かであった気がするような感じだ。


「あ、あの・・・君が俺の下駄箱の中にラブレターを入れた人かな?」


「ええ、そうで〜す、輝さん、今日は一日よろしくお願いしますね?」


 顔を上げた女の子は葵であった。俺は声も出せない。しかし、考えてみたらあの三人の中に犯人がいてもおかしくなかったかもしれない。


「・・・・。」


「サプライズですよぉ。ね、たまには二人で買い物もいいですよ?」


「・・・そうだな。俺の頭の中のほうがおかしかったな・・・。」


 どうやら俺は家に帰って加奈に謝らないといけないようだ。さて、これからどうしたものだろうか?


「じゃ、葵、どこに行く?」


「デパートでお買い物ですね。いや、やっぱり遊園地に行きましょう?」


 そういって俺の腕に引っ付いてくる葵。いや、意外とこれもいいかもしれん。

ま、まぁ・・・葵って結構スタイルいいし、顔もいいからなぁ。


 遊園地についてとりあえずジェットコースターに乗ることにした。しかし、俺はこういうのは全く駄目だ。怖い。恐い。コワい。


「う、うわぁぁぁっぁぁぁぁぁ!!」


「あははははははははっは!」


 俺の断末魔の叫びの隣では歓喜の雄たけびが聞こえてくる。いやぁ、目が回る・・・いや、気絶しそうだ。


「う〜ん、ギブアップだ。」


 一つ目で俺は白旗を揚げた。いや、本当にこういうのは無理です。助けてください。


「そうですか?なら、観覧車に乗りませんか?」


 有無を言わさず葵は俺を引きずって観覧車に乗せた。因みに言っておくが観覧車も駄目だ。特に、今日みたいに風の強い日にこんなものに乗ったら生きている心地がしない。


「・・・輝さん、そんなに近づいて何かエッチなことを考えてません?」


「・・・コワいコワいコワいコワい。」


 俺の口から漏れる本当の恐怖を感じたのか葵は俺の頭に手を乗っけた。


「全く、高所恐怖症だったんですか?」


「いや、そんなんじゃないよ。高いところは大丈夫。だけど、こう、揺れる奴は駄目。」


 我ながら情けない声を出しながら俺はしっかりと葵にしがみついた。


「・・・・私は輝さんの意外な一面が見れて嬉しいですよ?」


 葵はそういって不安顔の俺に微笑んでくれた。少しだけ、心を落ち着かせることが出来た。

 観覧車は俺が神様に願っていたからか無事に一周したのであった。隣の葵の顔は頼りがいがあってほっとする。


「次は何に乗ります?これですか?それともこれ?」


 パンフレットを指差す葵だが・・・どれも絶叫マシーンだ。ふ、葵よ・・・俺を仕留めにかかる気だな?


「冗談です、ちょっと休憩しますか?」


「ああ、休憩しよう。」


 俺と葵は近くのベンチに座ってクレープを買って食べ始めた。近くではヒーローショウが開催されている。


「・・・葵は遊園地に来るの初めてか?」


「ええ、初めてです。まぁ、私が知っているのはあの橋の下ぐらいな物でしたからね。輝さんは何回目ですか?」


 俺は葵にそう尋ねられて記憶をたどってみることにした。・・・・どうやら、初めてくるようだ。


「俺もはじめてみたいだな。小さいころに行った記憶が全くない。」


「え、そうなんですか?輝さんみたいな遊び人なら結構来てるって思ったんですが・・・。」


 遊び人とは失礼な・・・こう見えても俺は平凡な日々を有意義に使おうと努力しているのだよ。うん、友達に全て彼女がいたんで遊び相手はゲームかおばさんの家で飼っている犬だけだったな。そういえば、犬の姿が見えないけどどうかしたのかな?


「輝さんって、もてないんですか?」


 何気なしに葵にそういわれ、俺の心はビームで撃ち抜かれたように深い傷を負った。


「もてません、これまで女の子と話したことは片手で数えるくらいです。ハイ・・・。」


 俺と葵がそんなことを話しているとヒーローショウは佳境にはいったようだ。悪役が観客の中から誰かを人質にしようと選んでいる。あたりを見渡していると誰かに狙いをつけたようだ。少女を二人もステージの上に上げた。


「「きゃー、助けてぇ!!」」

二十、

 その二人は再び、叫び声を上げた。


「「きゃーたすけて、兄様!!」」


 その声に聞き覚えがあった俺はステージのほうを見た。葵も聞き覚えがあったのかステージのほうに視線を移す。


「何だ、あの二人か・・。」


 俺の視界に映ったのは黒河好きの双子であった。そして、その双子が見るほうには黒河がこれ見よがしに俺たちを発見して近寄ってくる。


「やぁ、偶然だね・・・。白川、葵ちゃんとデートだったのか?」


「へん、お前だってあの双子じゃねぇか。ほら、先程から助けを呼んでいるぞ?」


 ステージのほうからは黒河に置き去りを食らっている双子がこっちを向いて助けを求めている。なんだか本気のようでヒーローも悪人も困っているように俺には見える。どうやら、黒河と一緒にいてもいいことはなさそうだ。


「葵、そろそろ次、行こうか?俺たちが邪魔しちゃ悪いよ。」


「・・・そうですね。」


「し、白川・・・僕を見捨てるのかい?」


「見捨てる?なぁに言ってんだ!両方ともお前にぴったりだ。ほら、行って助けてこい。待ちきれなくなったのかあの二人が凄い業そうしてこっちに走ってきてるぞ?」


 俺が冗談でそういうとあわてたあいつはステージのほうを向いた。その隙に俺は葵の手をとってその場から脱出したのであった。


「はぁはぁ・・・ここまで来ればさすがの奴でもついてこれまい。」


「まぁ、邪魔されたら大変ですからねぇ。せっかくのデートですから・・・。」


 にこりと笑った葵の後ろに何処かで見た二人がこっちを見ている。いや、正確に言うなら一人と一匹か?


「輝、鼻の下を伸ばしてるんじゃないよ。」


「ばっへばっへ・・・。」


 おばさんと家にいる犬だ。補足として言っておくが犬のほうの名前はホワイティーンという。何故、犬の名前がこんな名前かというと・・・ホワイト・パンティー・モンモン(因みにこれは爺さんが名づけたらしい)を略したものだ。


「じゃ、そろそろ帰ってきてくれないかな?今日から私はちょっと用事があるからね・・・。」


「ばっへばっへ・・・。ふん!」


 そういっておばさんは俺たちの目の前から消え、ホワイティーンも瞬きした瞬間に姿を消した。・・・あれ、本当に人間と犬なのだろうか?


「・・・じゃ、そろそろ帰りましょうか、輝さん。」


 少しばかり残念そうな顔で俺を見る葵。・・・ま、おばさんが言ったんだからしょうがないか。


「葵、久しぶりにあの橋の下にでも行ってみよう。・・・・そこに行ってから家に帰ろうぜ?」


 葵はそれを聞いて道端で巨大ザリガニを見たような顔になったが・・・直に頷いて俺の腕にしっかり巻きついたのであった。俺は苦笑しながらもそのまま一緒に歩き出したのであった。


「・・・輝さん、やっぱり貴方は優しいんですね?」


「へ、俺が優しいなんていう奴は頭がおかしいよ。ま、考えてみれば俺にラブレターをくれる人間なんてそうそういないし・・・・俺もいい経験になったよ。」


 俺は葵の頭をぽんぽん叩いて遊園地を出たのであった・・・・。こうして、俺と葵のデートは幕を閉じたかのように思われたのだが・・・。


「輝さん、あれ見てください!」


 葵と会った端の下・・・そこには一人の老人が倒れていた・・・。


「・・・・まさか、爺さんか!」


 俺は急いで倒れている老人のもとに駆けつけて抱き起こした。その顔を見て俺が呟いたのがあたりだと知った。


「・・・・輝、出来れば男じゃなくて女の子が良かった。・・・ふ、久しぶりの娑婆じゃったんじゃが・・・運が悪かったのじゃ・・・婆に会ってこの有様じゃ。力を全て使い終えてしまったわしは・・・消えるんじゃ。」


 そういって爺さんの姿は消えてなくなってしまった。・・・何しに出てきたんだ?


「あれが輝さんのおじいさんですか?」


「ああ、スケベな爺さんでな・・・今回は何しに出てきたんだ?しかもさっさと退場してしまったし・・・。」


 二人して首をかしげながら考えていると・・・・川から何かが出てきた。


「あ、輝さんあれ!」


「・・・・って、あれは・・・。」


 俺と葵の目の前に現れたのはとてつもなくでかい白龍であった。うろこは既にくすんでおり、老龍という言葉がしっくりしていた。


 ぎしゃああああああ!!


 咆えるたびに何かが止まる気がする。俺の頭の中でも何かが止まっていく・・・と、そんな咆哮も数分したら止まった。


 俺の目の前で、川の流れはなくなっていた。雲も動いておらず、跳ねた魚は空に浮かんでいる。


「・・・これは一体?」


「どうなったんでしょうかね?」


 動いているのは俺と葵だけだ。いや、目の前にいる老龍は怒ってますといったオーラを出しながら俺たちに襲い掛かってきたのであった・・・。ピンチ?


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