股、始まる物語
一、
いままで、いることにさえ気がついてもらえなかった私に初めてきがついてくれた彼は死んでしまったのです。あれから、三ヶ月・・・・ちょっとスケベなあの人は・・・・天国に逝けたのでしょうか?
龍と書いてなんと呼ぶ?
「輝、少しは腕を上げたな?」
「ああ、まぁ、それなりに頑張ってたからな。ま、あれだけ頑張れば・・・・ちょっとは俺も強くなるよ。」
「おじいちゃん、おにいちゃん、ご飯が出来たよ?」
一見すると、とても仲がよい孫と祖父。・・・・まぁ、今のところはそれであってるのだが、他の家族とちょっと違うところがある。そう、この中で生きている奴は一人もいない。
俺の名前は白川 輝。
実の祖母に事故?で殺されてしまい、スケベ爺ととても素直な妹と一緒に天国でも地獄でもないところで生活している。俺としてはまだ、やりたいことがたくさんあるのだが・・・・・死んでしまい、どうすることも出来なかった。お先真っ暗で終わってしまった俺の人生だが、爺さんがどうにかして俺を復活させるために努力してくれた。無論、爺さんのライバル(ばあちゃん)をたおすために・・・・・。
「輝、あれから・・・・数ヶ月。ようやくお前を現世に戻す方法を思い出したぞ。」
飯を食いながら新聞にエロ本を隠しながら見ている爺さんは唐突にそう告げた。う〜ん、どうやったら菜々美に気取られずにあんな感じで見ることが出来るんだ?ちなみに、俺の妹の名前は菜々美という。この妹も、洒落にならんぐらい力が強く、爺さんがふざけたりすると問答無用で鬼になる。
「・・・おじいちゃん、そんなのご飯食べるときに読まないで!!」
菜々美よ、そういうものは爺さんの頭を思いっきり蹴った後ではなく、前に言うもんだろう?見ろ、爺さんが脳震盪をおこしてるじゃないか・・・・。だが、このくらいではあの爺さんは死なない。いや、もとから死んでるが・・・・とりあえず、死なないだろう。
「・・・とりあえず輝・・・食べ終わったらわしの像があるところまで来なさい。そこで話の続きはしよう。ここにいてはゆっくりと素晴らしき本が見られないからな。」
そういうと爺さんはすたこらと走り去っていった。俺と菜々美はため息をつき互いに顔を見合わせる。菜々美の顔は少し暗かった。
「・・・お兄ちゃん、お別れだね?」
「ああ、今まで世話してくれてありがとな。また、死んだときは会いにくるからな。成仏すんなよ?」
「うん!待ってるよ!!」
俺は立ち上がり、自分の妹の頭をなでた。もう、こんなことをする歳ではないが、生きているときに出来なかったのでしてあげてもいいだろう。はじめに言っておくが、俺は家族思いであって、シスコンではない!!
「このシスコン兄貴ぃ〜。菜々美タンに骨も魂もぬかれおって!」
「うっせい、爺さん!!」
俺は顔を出して叫んでいる爺さんに走って追いつき、華麗な蹴りをお見舞いしてやった。
そして、爺さんの像があるところに二人でやってきた。
菜々美は俺と別れるのが嫌らしく、部屋に引きこもってしまった。さて、それはそれでいいとして、今日もまた、爺さんの像のポーズが変わっている。今日はどこぞの変身ヒーローの変身するときのポーズか・・・・確か昨日はマッスルボディーを強調したポーズだったかな?あれは正直、夢に出てきておぞましかったな。
「・・・・さて、これからお前を現世に飛ばすのだが・・・・ときに輝よ。」
「なんだ、爺さん?」
「最後にお前に渡すものがある。これを持っていけ。これがお前を守ってくれるに違いない。」
渡されたものは・・・・いろいろと難しい文字の彫ってある木刀であった。なんか、触っているだけで背筋がぞくりとする感じだ。
「輝、この門をくぐるのじゃ。本当は、菜々美が大きくなってから使うつもりじゃったのだが・・・・まぁ、さすればお前は現世に戻ることが出来る。しかし、どうなるかはわからん。」
爺さんが指差したほうには、爺さんの像が股を開いて待っていた。ぐ、なんかすんごい生き返りたくなくなったなぁ。股くぐりたくねぇ〜。門か、これ?
「・・・・輝、早くいかんか!」
「え〜、だってよぉ〜こんなのいけるかよ・・・」
一応、抵抗はしておいたが爺さんはニヤニヤしているようだ。・・・・せめて、爺さんの股をくぐる前にしておきたいことがある!!
「爺さん、今まで菜々美に悪戯してきたぶんだ!受けとれぇぇぇ!!」
俺は持っている木刀を思いっきり爺さんの股にぶつけた。不意を疲れた爺さんは避けることができず、俺の攻撃で床に沈む。そして俺は爺さんの股をくぐったのであった。
「ぐぉぉぉぉ・・・輝め・・・やるようになったの・・・それに、まだあいつに言わないといけないことがあったのじゃが・・・自業自得じゃ。」
股をくぐった俺は、とある場所に着陸!!ではなく、着水した。
ばしゃーーん!!
「ぶはぁぁぁぁ!!」
俺はとりあえず岸に向かって泳ぎ・・・・途中でおぼれ始めた。みんな、川に服を着たまんまでおよいじゃ駄目だぞ?溺れてしまうからな・・・・俺のように。
く、このままでは再び爺さんのもとに戻ってしまう。何故だか・・・・泳ぎづらい。服を着ているからではないようだ。
俺は、溺れながらも自分の姿を確認してみた。
白銀に輝く体・・・・鋭く尖った爪・・・・長く伸びた尻尾・・・・そして、顔から伸びている二本の白い線。
どうやら、俺は今、龍になっているようだ。ははは・・・どうなってんだこりゃ?とりあえず、俺は溺れながらも岸に這い上がることが出来た。さて、これからどうなることやら?
ええと、どうも、久しぶりです。これからもよろしくお願いしますね?




