12
あれから何度目を瞑り、目覚めたのか・・・。
今目の前にある景色に私は口を開けずにはいられない。
「ここは・・・・」
ぽつりとつぶやく言葉にも驚きが隠せない。
私は確かに馬車に揺られていた。
何日も・・・。
しかし着いた場所は・・・・・。
「相変わらず間抜けな顔だな。ローズ」
ふと聞こえた声は懐かしい声だった。
「・・・・宰相様・・・・・」
目の前に立っている男は1年前まで毎日のように見ていた顔だ。
そして、もちろん口の悪さも。
「なんだ?お前はわざわざ隣の国にアホさ加減を磨きに行ったのか?」
にやりと笑うその顔も1年前のままだった。
「・・・なんで・・・・」
ひきつる顔を元に戻すこともなく私はなんとか言葉を発した。
「なぜかって?聞いているだろう?」
く、くえない・・・・。
相変わらずこの宰相様は・・・・・。
「わ、私は結婚・・・・・」
そう口にして目を開いて宰相を見た。
「そうだ。お前の結婚式は明日ここで行われる」
明日?
いや、確かにそれは聞いていたが・・・。
「・・・・ここで・・・・・?」
すかさず宰相が答える。
「ここだと言ったが聞こえなかったか?」
・・・嫌み具合も変わってないらしい・・・。
「どういうことですか?」
なぜ私の結婚がここで行われるのか・・・。
「どういうことも何もお前はこの国の者に嫁ぐからだ」
はい?
この国の?
「ま、まさか・・・・」
この目の前の男と・・・・・。
「お?気付いたか?」
ニヤリと笑う宰相様。
「嫌です!!絶対に!!無理です!!」
「もうこれは決まったことだ」
「そ・・・そんな・・・」
「あきらめるんだな。お前が嫌がってもこれはいわゆる政略結婚だ。お前の意思など関係ない」
「ひどい・・・・」
「何を言う!これほどイイ結婚はないだろう!!」
「そんなわけないじゃないですか!!私には無理です!!」
「無理な分けないだろう。1年前までは一緒にいたのだ!」
「そんな1年前だって!!」
ただの上司としてしか見てなかったのに!!
その言葉は続けられなかった。
目の前には1年間忘れようとしていた人物がやってきたのだから。
「・・・・・ローズ」
その声は1年前と変わりなかった。
「・・・・リルガ殿下・・・・」
目の前に立った殿下は少し背が伸びたのだろうか?
1年前よりも大きくなった気がする。
いや、背が伸びたわけじゃない。
背負うオーラが1年前までとは全然違ったのだ。
「・・・久しいな。ローズ」
殿下から発せられる言葉もどこか大人びて聞こえる。
いや・・・。たしかに私よりは年上だったのだが・・・。
「どうした?口が開いているぞ?」
にっこりと笑う顔も落ち着いた大人の顔だ。
今の殿下は私といたあの頃よりも王子らしくなっていた。
だけど、それは私の知っている殿下ではなかった・・・・・。




