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ローズの恋愛  作者: 睦月
第2章
42/49

12

あれから何度目を瞑り、目覚めたのか・・・。


今目の前にある景色に私は口を開けずにはいられない。


「ここは・・・・」


ぽつりとつぶやく言葉にも驚きが隠せない。

私は確かに馬車に揺られていた。

何日も・・・。

しかし着いた場所は・・・・・。


「相変わらず間抜けな顔だな。ローズ」


ふと聞こえた声は懐かしい声だった。


「・・・・宰相様・・・・・」


目の前に立っている男は1年前まで毎日のように見ていた顔だ。

そして、もちろん口の悪さも。


「なんだ?お前はわざわざ隣の国にアホさ加減を磨きに行ったのか?」


にやりと笑うその顔も1年前のままだった。


「・・・なんで・・・・」


ひきつる顔を元に戻すこともなく私はなんとか言葉を発した。


「なぜかって?聞いているだろう?」


く、くえない・・・・。

相変わらずこの宰相様は・・・・・。


「わ、私は結婚・・・・・」


そう口にして目を開いて宰相を見た。


「そうだ。お前の結婚式は明日ここで行われる」


明日?

いや、確かにそれは聞いていたが・・・。


「・・・・ここで・・・・・?」


すかさず宰相が答える。


「ここだと言ったが聞こえなかったか?」


・・・嫌み具合も変わってないらしい・・・。


「どういうことですか?」


なぜ私の結婚がここで行われるのか・・・。


「どういうことも何もお前はこの国の者に嫁ぐからだ」


はい?

この国の?


「ま、まさか・・・・」


この目の前の男と・・・・・。


「お?気付いたか?」


ニヤリと笑う宰相様。


「嫌です!!絶対に!!無理です!!」


「もうこれは決まったことだ」


「そ・・・そんな・・・」


「あきらめるんだな。お前が嫌がってもこれはいわゆる政略結婚だ。お前の意思など関係ない」


「ひどい・・・・」


「何を言う!これほどイイ結婚はないだろう!!」


「そんなわけないじゃないですか!!私には無理です!!」


「無理な分けないだろう。1年前までは一緒にいたのだ!」


「そんな1年前だって!!」


ただの上司としてしか見てなかったのに!!

その言葉は続けられなかった。

目の前には1年間忘れようとしていた人物がやってきたのだから。


「・・・・・ローズ」


その声は1年前と変わりなかった。


「・・・・リルガ殿下・・・・」


目の前に立った殿下は少し背が伸びたのだろうか?

1年前よりも大きくなった気がする。

いや、背が伸びたわけじゃない。

背負うオーラが1年前までとは全然違ったのだ。


「・・・久しいな。ローズ」


殿下から発せられる言葉もどこか大人びて聞こえる。

いや・・・。たしかに私よりは年上だったのだが・・・。


「どうした?口が開いているぞ?」


にっこりと笑う顔も落ち着いた大人の顔だ。

今の殿下は私といたあの頃よりも王子らしくなっていた。

だけど、それは私の知っている殿下ではなかった・・・・・。







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