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「おぉ!来たか!」
国王の執務室へたずねると満面の笑みで迎えられた。
「・・・・来たかじゃありません。一体どういうことですか!?」
怒る力もないと思っていたが、この国王の顔を見てしまうとどうにも怒りが沸き起こってしまう。
「どうもこうも、話しておいただろう?お前の結婚話だ」
話しておいた?
あればお義父様が話してくれたのであって国王に話してもらった覚えはない!!
ばれてしまったからしぶしぶ語った程度のものではないか!!
心の声が聞こえるのならば聞いてほしいくらいだった。
「・・・結婚は致しませんと申し上げましたが・・・」
こめかみがぴくぴくとうずくのを抑えつつ、静かに国王の思惑を否定する。
「・・・そんなこと聞いたか?」
しらじらしい!!
「ちゃんと申し上げました!!私の事よりご自分の事を心配下さいとね!!」
このロリコンが!!
「あー・・・。言っておったな。ふむ。しかし、これはもう決定事項だ。お前もすでにこの国の者だ。ということは私の命令は絶対だ」
にやりと笑うその顔を見た瞬間、思わず目の前が真っ暗になった。
「・・・・まさか・・・・。この為だけに養女になれと・・・・・・」
「そうだ。・・・そう聞いたのだろう?」
国王の笑みは変わらない。
思わず足元がふらついてしまった。
「・・・なぜ、私が結婚しなければならないのですか・・・」
どうして、私なのだ。
この国の女性は私以外にもたくさんいるではないか!!
「うむ。あちらも優秀な女性を欲しがっておってな。私としてもローズを手放すのは惜しいのだがこの国の為だ。いたしかたない」
もう、言葉が出ない・・・。
「それに、お前の結婚により我が国の立て直しは完了する。後は維持するかさらなる上を目指すかだな。やっと前国王の尻拭いが終わるわ」
・・・私の結婚で・・・?
「ローズ?聞いておるのか?」
覗きこむ国王。
その顔を思い切り睨みつけてやった。
「ほぉ。さすがローズ。まだまだ反抗する力が残っておるか」
はっはっはと笑う国王に私はもう肩を落とすしかなかった。
「・・・・まぁ、そう悲観するでない。お前に相応しい相手をちゃんと探してやった。・・・そろそろ区切りをつけろ」
急に真面目な顔になって話すものだから一瞬何の事かわからなかったが、国王の言っている事はあの人の事だったのだろう。
「・・・その事でしたら、もう忘れております」
忘れるしかないのだから。
「・・・・・ふん。お前は本当に気が強い」
少し顔をしかめたかと思うと国王はおもむろに机の上にあった書類を取り出しそれを私に手渡した。
「・・・これは?」
「今後の予定だ。お前が嫁ぐまでのな。準備などしっかりしろ。とはいってもこちらで全て手配は進めておるがな」
それを見るともう2週間後にはこの国を出発することとなっていた。
「・・・国王。一体お相手の方はどなたなのですか?こちらにはそう言った事がまったく書かれておりませんが?」
出発までの予定はびっしりと書かれている割にこの国を出発した後の事がまったく書かれていない。
「うむ。それはまだ言えん。我が国の立て直しが完了してしまったら困る国も多いからな。今回の事が外にばれてはまずい。内々密に事が進んでおるのだ。まだお前にも教えられん」
教えられない・・・・。
自分の結婚相手すら知らされないと言う事か?
「・・・・わかりました。では、私は早速家へ戻り義父と義母に伝えます。もちろんこの2週間は引き継ぎさえ終われば家で過ごしてもかまわないんですよね?」
相手などもう誰でもいい。
あの人でないのならば誰でも同じなのだから・・・・。
ただ、私を引き取ってくれた義父・義母には感謝の意を伝えたかった。