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「オーランド様、ふつつか者ですがこれからどうぞよろしくお願い致します」
オーランド家に向かう途中の馬車の中で私は頭を下げた。
「ローズ、今日から私の娘になったのだよ?父と呼んではくれないのか?」
にっこりと笑うオーランド様に戸惑いながらもその名を口にする。
「お・・・お義父さま・・・?」
「うーん。やはりそう言われるのは嬉しいものだね」
いつもと変わらぬ笑顔でそんな事を言われてしまってはこちらが照れてしまった。
そうこうしている内に、目的の場所に着いたのか馬車が止まった。
「さぁ!今日からここがローズの家だ」
言われて見る家は、さすがというかなんというか私には分不相応ではないかと思うくらい大きな家だった。
「あなた!!」
家から飛び出してきた女性はこちらをめがけて走ってきた。
「マリー。ローズ、紹介しよう私の妻のマリーだ」
そういうとマリーはローズの両手を包み込むように握った。
「貴方がローズね!待っていたわ!まぁ!なんて可愛らしいのでしょう!こんなに可愛い子が私の娘になるのね!」
落ち着いていて物静かなオーランド様とは対照的に明るくて元気な女性だった。
「あ、あの!ふつつか者ですが、これからどうぞよろしくお願い致します」
慌てて頭をさげる私にマリーはにっこりと笑った。
「ふふ。こちらこそよろしくね!さぁ、こんなところで立ち話もなんだわ!早く家に入りましょう!貴方のお部屋もお披露目したいわ!」
握られた手をひかれながら私たちは家の中へと入った。
「さぁ!今日からここが貴方のお部屋よ!」
そういって開いた扉から飛び込んできた景色はなんというか・・・・とても、ファンシーな部屋だった。
「マ、マリー様・・・。これは・・・」
「まぁ!マリー様なんて他人行儀だわ!お義母さんと呼んで頂戴!!」
目を丸くして怒るマリーはちっとも迫力がなくむしろとても可愛かった。
「お義母様?あの・・・このお部屋を私に?」
「えぇ!そうよ!・・・気に入らなかったかしら?」
首を傾げる姿もまたかわいらしく、気に入らないなど口が裂けても言えなかった。
「い、いいえ!とても気に入りました!!あ、あの大きな熊のぬいぐるみなど可愛くて素敵です!!」
ベットの横に置いてある大きなテディベア・・・。
もうすぐ21になる娘の部屋に置いてあるものなのだろうか・・・・・。
「そうなの!もう、あの子は一目ぼれして買ってしまったのよ!ふふ、気に入ってくれて嬉しいわ!」
きゃっきゃと喜ぶお義母様は一体いくつなのかと思ってしまうのは仕方のない事ですよね?
部屋の前で騒いでいると、この家の侍女が下でオーランド様が待っていると伝えてくれてほっとしたのは言うまでもない。
侍女の登場によりしぶしぶ階下へ降りるお義母様の後ろをついてオーランド様の待っている部屋に入った。
「・・・マリー。あまり騒ぎすぎるとローズがつかれてしまうよ?」
今まであった事を知っているかのように苦笑しながらオーランド様が言う。
「そうね。つい嬉しくて・・・」
そう言いながらさりげなくオーランド様の隣りに座るマリー様をみると2人の仲の良さが伝わってくるようだ。
「ローズ、君も座りなさい。これからの事を少し話しよう」
そう促されて私も2人の向かいの席に腰を下ろした。