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「オ、オーランド様!!よろしのですか!!」
話は済んだとばかりに部屋を出ていく国王の後にいたオーランド様を呼びとめた。
「・・・ローズは嫌かい?」
深く刻まれた目元のしわがオーランド様の雰囲気をさらに際立たせた。
「いいえ!!宰相様の所に行く位でしたら、オーランド様に引き取られた方が数万倍マシです!!」
「こらこら、宰相殿がいる前でそんなこと言う物じゃないよ?」
こつんとおでこにげんこつが落ちて来たが全く痛くなかった。
「申し訳ありません・・・・。しかし、本当によろしいのですか?」
ちらりと上目づかいで見上げれば、いつもの優しい笑顔がそこにあった。
「ローズ。君がこの国のために一生懸命働いてくれていた事は私も知っているよ?そんなローズが私の娘になってくれたのならば残りの余生も楽しそうだと思ったのだ」
頭を撫でられている時点で私は子供扱いだ・・・。
「オーランド様がそうおっしゃられるのでしたら・・・・。しかし、私みたいな者が養女となって公爵様の名に傷が付きませんでしょうか?」
オーランド公爵と言えば、この国一番の有力者だ。
人柄もさることながら政治に置ける手腕もこの方の右に出るものは居ないと言われている。
「そんなことを気にする事はないよ。大体、私が申し出た話なんだからね」
そういうとオーランド様は国王を追いかけるように去っていった。
「良かったではないか!ローズ!オーランド公爵のようなところへ養女へ行けるなど、お前にとっては夢のような話だぞ」
今まですっかりその存在を忘れていた宰相がいた。
仕事はできるのに、必要のないことをぺらぺらとしゃべるのが悪い癖だ。
「左様でございますね。さぁ、宰相様も頭を抱えてた問題が解決したのですから、さっさと仕事をなさってください!そういえば、先日、民より要望のあったあの案件はどうなっていらっしゃるのですか!?」
「おお!そうだそうだ!その件でお前の意見を聞きたい!」
仕事の話となると嬉々として話し出す宰相は問題が片付いたとばかりにすっきりした顔をしていた。
「・・・仕事の事でしたらいい上司なんですがねぇ・・・・」
ぼそりとつぶやく私の言葉は宰相の耳には届いていなかったらしく、さっさと自分の席に戻り資料を取り出していた。
それにしても、養女だなんて国王もイキナリ何を考えているんだか。
あの理由も絶対に建前だ。
何かしらの事を企んでるはず・・・・・。
「はぁ・・・・」
考えると気が重くなり、溜息が洩れた。
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あれから国王はオーランド様の養女とさせるべくさっさと手続きを行った。
「私の手にかかればこんな書類もあっという間だ!」
うふふ。
殺意が芽生えたけど我慢しましたよ?
偉い?えらいよね?
「ローズ・・・・。辞めろ。その笑みは怖いし、殺気が隠しきれてない・・・・」
後ずさる国王に言われにっこりと笑った。
「うふふ。失礼しました。ついうっかり隠しきれないくらいの殺意が芽生えたもので」
国王は苦笑いをしたかと思えば、私の発言をきかなかったかの様にオーランド様を呼んだ。
「オーランド!今日からローズがお前の娘となる。これから、ローズを頼むぞ?」
「はい。お任せ下さい。この話をしたときには妻も大喜びでした。新しい家族が出来た事心より感謝いたします」
国王にお礼を言うオーランド様を見て、こんな娘で良かったのかと不安になる私だった。