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国王はしぶしぶ話始めた。
「実は・・・・、この国の人間でないお前が施政に関わるのを反対するものがいる事は知っているな?」
「・・・はい」
当然と言えば当然だ。
だから、以前から私は城下で働くと言っていた。
「そいつらが最近更にうるさくてな。もういい加減ウンザリなのだ。だからと言ってローズを手放すと誰がお前の後を継ぐ?お前程優秀な奴は今のところ他にいないのに」
国王は深いため息をついた。
「・・・・よって、周りを鎮静化させる為にもローズを我が国の人間としたいのだ。大体、こんな事がもとであと一歩というところまで終わった立て直しを無駄にさせるような事はローズ・・・、するわけないよなぁ?」
痛い!!
今すごい痛いところを突かれた。
「お前の一声で問題などすぐに解決するのだからな?」
にやりと笑う国王の顔が悪魔に見えた。
「・・・・わ、わかりましたよ!!養女でもなんでもなります!!」
「おぉ!!わかってくれるか!さすが、ローズだ!!早速、宰相に知らせよう!!」
大げさに喜ぶ国王。
殴っていいですか?
殴っていいにきまってますよね?
繰り出しそうになるパンチを片方の手で押さえながら、しぶしぶ執務室へ戻った。
「宰相!!宰相!!」
国王が大声で呼びながら部屋へ入ると、宰相様は慌てて席から立った。
「こ、これは!国王様!!ローズがまた何か致しましたか!!」
汗を拭うちょっぴりぽっちゃりしたおじ様。
って、なんで私が何かしなくちゃいけないのよ!!
「喜べ!ローズがお前の養女になる事に納得したぞ!!」
「さ、左様ですか・・・」
宰相様・・・。明らかに焦ってませんか?
何さ!嫌ならなんでこの話を受けたんだ!!
「し、しかし、ローズは本当にそれでよいのでしょうか?」
「良いと言ったのだ!・・・お前は嫌なのか?」
国王の視線が鋭く宰相を捉えた。
「・・・・国王。宰相様ビビってますから」
大体、宰相様の娘になるってなんか実感わかないしな。
宰相様ってなんか小物って感じだし・・・。
私だって、どうせ養女になるならもっと大物の楽出来る家の子がいいのに・・・。
はぁ・・・・。
国王は宰相を睨み、ウサギのようになっている宰相の姿を傍観していた時、執務室のドアがノックされた。
「誰だ!!この大事な時に!!」
国王はちょっといらいらした声で扉の外にいる者に声をかけた。
すると、外にいた者が扉を開け中に入ってきた。
「失礼しますよ?おや、お取り込み中でしたか?」
その顔には優しい笑顔が浮かんでいた。
「・・・・・オーランドか」
国王は部屋に入ってきた人物を見た。
「国王?・・・皆さんおそろいで何されているのですかな?」
オーランド様は、ほんわかとした空気を纏っていた。
「実は、宰相がローズを養女にすることを渋っておるのだ。お前からもなんとか言ってくれ」
肩をすくめる国王にオーランド様はさらににっこりと笑顔になった。
「ほぉ。ローズをですか?でしたら、私の所でお引き取り致しましょう」
いきなり何を言い出すんだ?この人は!!
あ!国王の顔がにやりになった!!
「・・・どういうことだ?」
「宰相様はご自分の娘がいるのに養女をとるのは娘さんに気が引けてしまわれるのでしょう。でしたら、子がいない私の所ではいかがかと」
軽く言っているが、オーランド様!!
それでいいのですか!!
こんな大きな娘がいきなり出来るんですよ!!!
言葉には出せないながらも目で必死で訴えた。
「ふむ・・・。オーランドの所か・・・・」
顎に手を当てて考える国王の横で、オーランド様がこちらに向かってウインクをしていた。
「よし!そうしよう!オーランド!!ローズを頼むぞ!!」
「はい。この年で娘が出来るとは思いませんでした。妻も喜ぶでしょう」
取り残された宰相は口を開け、その様子を見守っていた。
同じくらい、私も取り残された感があるのはなぜだろう・・・・。
これって、私の事だったよね?