28
「・・・・ローズ・・・・・」
「で、殿下!!私はこれで失礼しますね!!では!!」
さっさと家に帰ってしまおうと思ったら、首根っこを掴まれてしまった。
「・・・・でんか?」
「ローズ・・・。無事でよかった」
そういうと、殿下は私をギュッと抱きしめた。
「・・・・殿下・・・・・・」
「すまない。一人で危険な目にあわせてしまって。情けないよな・・・・。殿下とか呼ばれながら俺は何も出来ないんだから。辛い思いをしていたローズを抱きしめる事も出来なかった・・・・」
「・・・殿下・・・・・。大丈夫です。私を隣国へ行かせて下さってありがとうございました。おかげで自分でけりをつける事が出来ました」
殿下からそっと離れ、頭を下げた。
「・・・・大丈夫なのか?本当に」
「はい。自分の兄のしでかした事です。欲に目が眩んだものの末路なのですから・・・・」
そう。ジクは私の兄だった。
私たち兄妹でこの国の為にと働いていたのに、兄があんな事をしていたなど信じられなかった。
「・・・・ジクには悪いが、こちらで弔うこともできない。今回の事はなかった事になるだろう・・・・」
「・・・構いません。それよりも、兄がご迷惑をおかけして申し訳ありませんでした」
「・・・・いや・・・・」
殿下もそれ以上は何も言えないようだった。
「・・・・私は、家に帰ります」
頭を上げにっこりと笑い殿下に告げた。
「・・・・ローズ、こんなときにこんな事を言うのは不謹慎なのだろうが、俺と結婚してくれるだろう?」
「・・・・殿下・・・・。・・・それは出来ません」
きっぱりと否定した。
「なぜ!?俺を愛してくれているのだろう?」
「はい。愛しております。ですが、こうも申し上げたはずです。『この国も愛しているのです』と。兄がしでかした事が他の者に解ってしまえば殿下のお立場は危うくなってしまいます。こんな私を選ぶより、もっと身元のしっかりした方をお妃様にしてください」
そういうと、私は殿下が何かを言う前に私はその部屋から飛び出した。
殿下の妃になりたかった。
馬鹿みたいな事を言い合って、楽しい家庭を築きたかった。
しかし、兄のしたことは許されない。
この国を裏切ったのだから。
兄の罪は私の罪。
兄の思いに気づいてあげられなかった。
もしかしたら、どこかでサインを送っていたかもしれなかったのに!!
兄の思いに気づけない私が殿下の傍にいて、支える自信などない。
私よりももっと殿下の事を支えて差し上げられる女性を見つけてくれればいい。
走って走って、もう走れないと思う頃には日が傾いていた。
「・・・これから、どこに行こう・・・・」
「・・・だから、俺の所に来いと言っているだろう?」
「・・・・国王様・・・・」
なぜこんなところに?
「なぜかって?お前を追いかけてきたのだ。あまりにも遅くてすぐに追いついた」
「・・・足が遅くてすみませんね・・・」
「ふむ。まだそんな口が聞ける余裕があったか。傷ついたローズを慰めてそのすきに私という存在を刻みつけてやろうと思ったのだが?」
「・・・・そういうことをぺろっと口に出さないでください」
「ははは。伝えないとわからないだろう?」
国王様は私の隣に来てそこに私を座らせた。