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まったく、ほっておいたらくだらない事でいつまでも話が進みやしない。
「いいですか?国王様も殿下も私の事は置いておいて下さい!とにかく今はジクの事です!!」
私の言葉を聞いてか、殿下はハッとした表情になった。
「・・・・ジクはどうした」
「俺が殺した」
国王がまた、勝手にしゃべりだした。
「なに!?殺しただと!?」
「ま、まってください!!殿下、これには訳があるのです!!国王様も黙っていてください!報告は私の役目です!!」
2人ともまた静かになった。
「ふぅ・・・。殿下。報告申し上げます」
姿勢を正し、隣国で合った事を話した。
「・・・・・ジクが・・・・・」
殿下も信じられない様子だった。
「・・・はい。私が狙われていたところをこちらの国王様にたすけていただきました。私とした事が、後ろにいた事に気づきませんでした・・・・。ジクの死は当然の事だったのです・・・」
またもや、涙がこみ上げてきた。
「・・・そうか。辛い思いをさせて済まなかった。ローズ」
傍に殿下がやってきて肩に手を置いた。
「・・・・女を慰めるときは抱きしめてやるものだろう・・・。まぁ、さっき私がしてやったからもういいだろうがな」
また!!余計な事を!!
こみ上げた涙も瞬時に引っ込んだ。
「・・・・抱きしめたとでも・・・?」
おぉ・・・・。
殿下の声色が変わった・・・。
「あぁ、わんわんと私の胸で泣いたな。なぁ?ローズ」
その口縫い付けてしまいたい気分だ。
「・・・ローズ?それは本当かな?」
穏やかな口調だが声色はさっきと変っていない・・・・。
黙ったもん勝ちだ。
「・・・・ローズゥ?」
もう片方の手が開いている方に置かれた。
ひぃぃぃぃぃぃぃ。
「・・・・・抱かれましたが、それは抱かれたというより・・慰められたという方が・・・」
「ふぅん。抱かれたんだ?」
「い、いえ。ですから、慰めて頂いた・・・・・」
肩に置かれた手が徐々に下がっていく。
抱きしめられるかと思ったら、急に手のぬくもりが消えた。
「ったく。そんなことぐらいで嫉妬するようではまだまだだ。好きな女を怯えさせてどうする」
頭の上から国王様の声が聞こえた。
「・・・・・離せ」
「離してもよいが、もうローズを怖がらせるなよ?」
「・・・っ。わかっている!!」
何も頭の上でやり取りをしなくてもよいだろうに・・・・。
動きようがなく困っていたら、またもや聞き覚えのある声が聞こえた。
「殿下、いいかげんにしてください。隣国よりはるばる来て頂いたのです。ローズなどを取り合っている場合ではないでしょう!」
・・・・ローズなど・・・・。
ひどい・・・。
このひどさは間違いなく、宰相様だ。
そう思い、顔を上げるとすぐ横に宰相様が立っていた。
「・・・ローズ、いつまでそんな所にしゃがんでいるのですか。邪魔です。どきなさい」
上から見下ろされさらに怖みを増す。
「・・・・はい」
赤ちゃんがやるようにハイハイをしながらその場から離れた。
「大変失礼しました。ノーダン国王様。あちらの部屋で陛下がお待ちです。どうぞ、ご案内いたします」
「うむ。こちらの国は宰相がしっかりしているのだな。まぁ、私のローズをなど呼ばわりした事はわすれてやろう」
「はっ。ありがとうございます。では、こちらへどうぞ」
宰相様が国王様を連れて部屋を出た事にほっとしたのも束の間、後ろにはただならぬ気配で立っている殿下がいたのだった。