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いつまでたっても痛みを伴う事はなかった・・・・。
ローズはそぅっと目を開けると、国王の手から短剣は消えていた。
「・・・・これで、お前の気にするものはいなくなった」
国王の視線は私を通り過ぎ私の後ろに向いていた。
その視線の先を追って後ろを振り向いた。
「・・・あがっ!!」
私の真後ろにいたのは、この事件を引き起こした張本人だった。
「・・・ジク!!」
ジクの首には短剣が刺さり、そこから真っ赤な血が次々と流れだしていた。
「・・・・牢に入れておいたはずなのだがな・・・・」
国王がぽつりとつぶやきジクに近づいた。
「・・・・お前の主に言う事があるだろう?」
国王がそういうとジクは私の方をみた。
「・・・・はっ・・・・なにも知らないこんな小娘に言う事はない・・・・しんじるほうがばかなんだ・・・・」
冷たい視線をむけられ最後の言葉を吐いたとともに、ジクは床に倒れこんでしまった。
「・・・ジク・・・・・」
こみ上げる涙はジクが死んだから泣いているのだろうか?
それとも、裏切られた事に泣いているのだろうか・・・・。
自分でもわからない気持ちの中で、頬に冷たいものが落ちて行った・・・・。
「この者を片付けよ!!」
国王が叫ぶとどこからか近衛達がやって来てジクを運んで行った。
「・・・・あいつの亡骸はこちらで処理をさせてもらう。よいな」
国王の言葉に首を縦にふった。
「・・・・・お前一人が抱えるには大変かもしれない。だが、お前の国との和平はこれまで通りでいたいと思う。・・・国に帰り、この事を伝えてくれるな?」
そっと私の傍まで来て国王は私を包んだ。
「・・・・っ!こくおう・・・さまっ・・・!」
急いで離れようとする私の肩をぐっと捕まえ先程以上にぎゅと私を抱き込んだ。
「・・・・無理をするでない。泣きたいときに泣かねばそれはいつまでも心の中に巣食ってしまう。辛い思いをいつまでも抱えず、今涙とともに流しておけ」
その言葉をきき、ローズは国王の胸でわんわんと泣いてしまった。
「・・・・お前一人で抱え込むとは・・・・。一体、お前の国の国王はどうなっているんだ・・・・」
ぼそりとつぶやく国王だったが、悲しみに暮れて大泣きをしていたローズには聞こえていなかった。