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「・・・何がおかしいのですか?」
こっちは真面目に話しているのにこの新国王の態度に腹が立った。
「・・・いや、すまぬ。ローズ、お前は何も知らないのだな・・・」
すると、途端に新国王の顔が真面目になった。
「・・・お主のいう『ジク』とやらが素直に帰るのならば返してやろう。しかし、その前に話しておかなければならない事がある」
「・・・・なんでしょう」
「お前の国では我が国に何か恨みでもあったのかな?」
「は?・・・・唐突に何の事でしょう?そんなものあるわけがありません」
「正直に言え。お前個人で来たと言うが、間者を持つくらいだ。それなりの地位に着いているのであろう?」
・・・この国王、なかなかするどい・・・。
「・・・今はただの小娘にすぎません」
「ほう。しかし、以前はやはり王宮で勤めておったか。ローズ、お前の国の宰相補佐官は確か女性だったな」
こちらに視線を向けるとにやりと笑った。
「・・・・それで、何がいいたいのですか?」
ほぼ確信をもったのだろう。
国王は顎に手を当てて何やら考え始めた。
「・・・宰相補佐官の耳に入らないくらいか。・・・やはりあの件で動いていたのか・・・・」
ぶつぶつ何かを言っていると思ったら、急に視線をこちらに向けた。
「ローズ。我が国はお前の国と戦争をしたいと思っているわけではないぞ」
「は?」
突然何を言い出すのかと思えば、あんな事をしておいて今更だ。
「では、なぜ我が国を襲うような真似をされたのですか!!罪のない民を殺しておいて良くそんな事が言えますね!!」
殿下は、その事をとても悔やんでおられたのに!!
怪我をした人達の中には家族を亡くした者もいたのに!!
「・・・・落ち着け。あれを仕掛けたのは私ではない」
国王は衝撃的な言葉を口にした。
「・・・・何をおっしゃっているのですか?確かにあなたの国がこちらを襲ったと聞きました。あの村のものもそう言っておりました」
怪訝な顔をして、国王を見た。
「国の立て直しにばかり目がいって、国境の方であんな事が起こるとは思っていなかった。それに関しては私の落ち度だ」
・・・・聞いていた話と違うようだ。
「・・・・あなたが国の立て直し?国王家族の惨殺をしたのでしょう?」
国王相手にこんな事を言うのもどうかと思ったが、少し聞いていた話と違う雰囲気の国王に直接聞いてみたかった。
「国王家族の惨殺?私が?・・・はっ、ジクとやらにそう吹き込まれたか」
呆れた様に国王が言葉を吐き捨てた。