18
「・・・・・ローズ?」
殿下は呆気にとられていた。
「そんな事を言って助けに行かないなんて愚弄するも同じですよね?殿下」
ぐっと殿下は喉を詰まらせた。
「まさか・・・・ローズ」
「ふふ。殿下が上手く乗ってくれて助かりました。もちろん、ジクを助けに行きます」
「だ、ダメだ!!」
殿下は慌ててローズを止めようとした。
「殿下?殿下が言われたのですよ?国の為に捕まったものを愚弄するなと。国の為に捕まったジクを捨て置く事は愚弄する事ではないのですか?」
殿下の顔は真っ青になっていた。
「殿下、国に迷惑がかかってはなりません。私は今日かぎりで宰相補佐官の任を下ります。これは私個人がしでかした事だとお思い下さい」
膝を下りスカートを摘み正式な礼をして殿下に申し出た。
「な、ならん!!それはダメだ!!これは国の事だ!ローズが一人で犠牲になる事はない!!」
「殿下!解ってください。国として動けば戦争になってしまうかもしれません!私一人であれば個人のしでかしたこととして私が責任をとればいいだけなのです!」
「駄目だ駄目だ!!ローズ、一人で背負うことはない!」
「殿下?嫌いになりますよ?そんな駄々っ子みたいな事を言わないでください」
苦笑しながら姿勢を元に戻す。
ふと、周りをみるといつの間にか宰相様の姿はそこになかった。
「・・・・私はこの国が大好きなんです。殿下がいて、意地悪だけど宰相様がいて、町の皆がいて。だから、この国の為に働ける事は私の誇りです。その誇りを取り上げないでください」
「・・・ローズ」
涙をうかべる殿下。
この間のしっかりした殿下は一体どこへ行ったのだか・・・。
「殿下・・・・。私、殿下が傍にいてくれてとても楽しかったです。いつもうざいくらい私に好意を抱いてくださって・・・・。いつの間にか私も殿下が傍にいる事が当たり前だと思っておりました。だから、この間、私に黙って行かれた時にはとてもショックでした」
殿下は黙って私の話に耳を傾けていた。
「ただ私は黙って行かれたからショックだと思っていましたが、殿下が戻ってこられて、救えなかった者の事を思い落ち込んでいらした時、私、気付きました。殿下を守りたいと・・・。殿下の笑顔をずっと見ていたいと・・・。私の言っている意味解りますか?」
まっすぐに私の目を見てうなずく殿下。
「私、殿下を愛しております。そして、同じくらい殿下が守っておいでのこの国を愛しているのです。すこしでも私がこの国の平和に役立てるのなら、喜んでこの身を差し出す覚悟です。わかってくださいますね?殿下」
殿下の目がまっすぐこちらを見ている。
それは、殿下がわかってくれたという事だった。
「ローズ・・・・・。お前が無事に戻ってくるまで、私は待っている。先に言われてしまったが、私の妃となるのはローズ、お前だけだ。かならずシグを助け、無事に戻って来てくれるな?」
「はい」
殿下の目をまっすぐと見つめ返事をした。
その視線を殿下の視線によって捕えられた。
そのままお互いの距離が縮まるとそっと殿下の唇に触れた。
甘く・・・切ない口づけだった。
唇が離れると、私は無言でその場を後にしたのだった。