16
殿下は黙ったままだった。
「・・・・殿下。あなたの元気は今傷を受けた者達を元気にします。だって殿下はおバカさんでしょう?」
殿下は顔をあげた。
「ふふ。殿下のおバカ加減には私いつも困ってます。だって、辛いときも元気になれるんだもの。というか、辛くなれる時間がないんです。そんな時間を今生きて頑張っているものにあげてください」
にっこり笑うと殿下は口を開いた。
「・・・ローズにはやっぱり叶わないな」
困った顔をして笑う殿下。
「しかし、一国の王子をなんどもバカバカというなんて、さすがの俺も傷つくぞ?」
「まぁ!!それはすいません。ついうっかり思ってる事が口に出てしまって!!」
大げさすぎるくらい驚いて見せた。
「・・・・ローズ・・・・」
はぁ。っと溜息をついたかと思うと殿下は自分の頬を両手で叩いた。
「そうだな!!この国にはまだたくさんの民がいる。私がしっかりせねば皆困ってしまうな!!」
「そうですよ!!さぁ!殿下のおバカを皆に振りまきに行きましょう!!」
「ローズ・・・。元気と言ってくれ・・・」
2人して顔を見合わせて笑った。
殿下が立ち直ってくれてよかった。
殿下が元気でないとなんだか私も悲しくなってしまうのだから・・・・。
********************************
あれから殿下は落ち込んでいた事がウソの様に、明るく振舞った。
多少無理している感じはあったものの、殿下の笑顔が傷を受けたもの達に笑顔を与えた。
「殿下!!私、殿下が好きです!!」
小さな小さな女の子が殿下の前にやって来て言った。
「なんと!嬉しいな。しかし、そなたが結婚できるまで私は待てないぞ」
女の子は泣きそうになってしまった。
「すまないな。私にはすでにローズがいるからな。そなたならもっと素敵な男性があらわれるだろう」
にっこりと笑う殿下。
「殿下!!なんで私が関係あるんですか!!そんな小さい子にウソつかないでください!!」
横で聞いていればある事無い事しゃべって!!
「何を言う!これは私の本音だ!!そして近いうちそうなる!!」
何を勝手に決めちゃってくれてるんですか!!
「バカなこと言ってないでちゃっちゃと仕事してください仕事!!」
「・・・殿下、振られちゃったね・・・」
その様子を目の前で見てた女の子は殿下の肩をポンポンと叩く。
するとそれを一部始終見ていた周りから笑い声がこぼれる。
こんな日が続いて皆の心が癒されればいいと思っていた。
あの手紙が届くまでは・・・・・。




