15
「殿下!!」
執務室へ戻る殿下を見つけるとローズは声をかけた。
「・・・・ローズ・・・」
こんな殿下は見た事がない・・・。
とても悲しい顔をしている顔なんて。
「・・・殿下。大丈夫ですか?顔色が優れませんが・・・」
「あぁ。大丈夫だ。・・・・ひどい有様だった」
「・・・・殿下・・」
「内紛を止めようとして散々議題にあげてきた。でも、ここでいくら討論しても無駄だったんだ!現地にいって良く話をきくべきだった!そうしたら、隣国が攻めてくることもなかった!!」
殿下は頭を抱え込んだ。
そっと殿下に近づき殿下の手をとった。
「違います。殿下。殿下はあの地の者達にとって最も良い方法を探しておいででした。そこに目をつけて襲ってきた隣国が悪いのです!」
こんなに弱った殿下は初めてだ・・・・。
いつもの殿下の面影など微塵もない。
「・・・ローズ。私は、今まで何をしてきたんだろうな・・・」
「・・・殿下・・・・」
「いざという時の為に腕も磨いてきた。何か起こっても対処できるよう勉学にも励んだ。・・・しかし結局この有様だ。俺は何も出来なかった・・・・」
・・・・殿下はぽつりぽつりと言葉をこぼした。
それが本当に心からの叫びの様に・・・・
「殿下。・・・こう急に攻めて来られたら打つ手がなくても誰も責めません。報告があってすぐに殿下ご自身で駆け付けられ、その地の者を救って来られたではないですか!」
「・・・しかし、救えなかった者も大勢いる・・・・」
・・・・今の殿下は救えなかった事をとても後悔している。
でも、殿下が助け出したものも大勢いるのに・・・・
・・・・・殿下がこのままではいけない!
「殿下!!!」
突然の大声に殿下は顔を上げた。
「いつまでくよくよされるおつもりですか!!あなたはこの国の王となられるお方ですよ?あなたがくよくよしていては下に示しがつきません!!!」
しっかりして下さい!
今ここでなよなよになってどうするんですか!
「・・・・ローズ、そんなことを言っても俺は何もできないんだ・・・・」
言葉が届かない・・・。
殿下の悲しみは深いところにまで巣食っている。
「殿下の良いところはすぐに立ち直ってしつこいくらい食いついてくるところじゃないんですか?」
「・・・ふ・・・。それとこれとは違うだろう。これは人の命の問題なんだ」
「それでも、殿下の持ち前のしつこさと明るさでしなければならないことがあるでしょう?」
「・・・一体俺に何をしろと言うんだ?・・・・俺は自分の国の者も救えないんだぞ!!」
殿下は苛立っていた。
自分が何もできないと思って。
救えなかった人達の事を思って。
でも・・・・・
「・・・・殿下。救えなかった者を思う気持ちも痛い程よくわかります。しかし、あなたの国の人間は救えなかった者達だけが全てなのですか?それでは今王宮にいる者達は守らなくてもよろしいのですか!?これから傷ついてしまうかもしれない者を出してもいいんですか!?殿下がいつまでも引きずっていては生きている者にも亡くなった者にも失礼だわ!!」