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「・・・・それが、目的がさっぱりわからないのです」
宰相はさらに深く眉間にしわを刻んだ。
「どういう意味だ?」
「調べても調べてもこちらを狙って隣国にとって利益を生む事はありません。侵略かと思えばそうでもございません。何かこちらに恨みでもあるのかと思って調べたのですが、特に現国王はそういった事もないようです」
「ならばなぜ攻撃を仕掛けてきたのだ・・・・・・」
宰相様は顎に手を当て考え込んでしまった。
思い当たる理由がない・・・・。
では、あちらで何か秘密裏に行われてる事があるのだろうか?
しかし、その情報がかけらもないというのはおかしな話だ。
まさか、殿下をおびき出す為では・・・!?
「宰相様!もしやとは思いますが殿下をおびき出す為に・・・・」
「それはないぞ、ローズ。殿下に会いたいのであればあちらはすぐに会える。殿下を人質にとったとしてもこちらが脅しに屈する事はない」
そうだ・・・。殿下の命が狙われた場合、国に危険が及んではいけないため、助けるどころか捨て置かれてしまう・・・。
それもひどい話なのだけど・・・。
「・・・では、なぜでしょう?」
「わからん。何を考えているのやら・・・。しかし、情報があつめられないとは困った。ジク、引き続き情報を頼む。・・・怪我の手当てはしておけよ」
「はい。了解しました」
ジクは返事をするとともに姿を消した。
「・・・ローズ。とにかく、殿下が帰られた時の用意をしておけ。負傷者が多数いるだろう」
「はい・・。手配しておきます」
負傷者・・・・。
一体どれくらいの人が怪我をしたのだろう・・・。
これだから、戦争って大嫌い!
人を傷つけてまで獲るものの何がいいのかわからないわ!!
「はぁ・・・」
「お前が気を落とすな。これから王宮に来る者たちはもっと辛い思いをしているんだ。我々がしっかりしないでどうする」
・・・・こういう時は本当に頼りになる。
宰相と言うだけあるよね・・・。
普段、あんなに鬼のようだけど・・・。
「そうですね!では、私も手伝いに行ってきます!!」
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殿下が戻られたのはそれから3日後だった。
「こっちの者を先に手当てしろ!!」
「大丈夫。傷は浅い。気をしっかり持つのだ」
・・・殿下はいつもの殿下とは思えない。
「ローズ!ボケっとしてる暇があるならそちらの者の手当てをしろ!」
「はっはい!!」
今までこんな殿下は見たことがない・・・。
そりゃ、これだけのけが人がでて冷静でいろと言う方が難しいよ。
でも、殿下はいつもどおりほわーんとしてるんだと思った。
殿下が殿下に見える・・・・。
「ありがとうございます・・・」
ふと気付くと目の前にいる男が口を開いた。
「い、いえ!!お礼を言われる事ではありません。私たちが貴方達を守るのが遅れてしまったのですから・・・・」
もっと早くつかめていたら・・・・
「いえ。それでも、殿下をはじめ騎士の方々は必死に私たちを助けて下さいました。更には危険だからと生き残った村人全員を王宮に連れて来てくれたのですから」
そうだったのか・・・。
どうりでけが人でない人も見かけるとおもった。
「そうだったのですね。こちらは安全です。しっかり傷を癒してください」
「はい。ありがとうございます」
にっこり笑うとローズは殿下のもとへ走った。