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王宮を出て、人目につかないところに来た。
「リュー」
はっきり聞こえる声で呼んだ。
「はっ!ここに」
「ご苦労様。悪いんだけど、隣国の様子を見に行っているジクを呼んでちょうだい。今晩までに宰相様の執務室に来なさいと」
ホントはこんなことがないように祈っていた。
彼らはいざという時には間者となる。
それ以外は普通の情報諜報をするだけなのに。
「ローズ様・・・。お顔色が優れない様ですが・・・?」
「・・・えぇ。あなたはもう知っているでしょう?」
「・・・殿下の事にございますか?」
「そう。私は今朝殿下が出立されてから知ったわ。もっと早くに教えて下されば何か役に立つ事が出来たのに・・・」
悔しい・・・。
平和ボケしていたのかもしれない。
「お気を落とされず・・・。まだ我々は出来る事があります」
「ええ。そうね。では、ジクをお願い」
そういうと、リューは姿を消した。
ふぅ・・・。
悔しがってる暇はないわ。
今私が出来る事をしなければ!!
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「宰相様!こちらの状況はわかりましたか?」
流れるように普段の書類を裁きながら処理していく。
「・・・うむ。どうやら、けが人や死傷者はあまり出ていないようだ。しかし町の状況はひどいらしい。家は焼き払われ辺りは焼け野原だそうだ」
焼け野原・・・・。
ひどい。
なんの罪もない人たちを巻き込むような事をして!
絶対に許さない!!
「ローズ。あまり感情的になるなよ?隣国の狙いはまだわかっていない」
狙い・・・。
本当に何が狙いなのかしら?
「・・・わかっています。・・・しかし、なぜ・・・」
今まで、隣国との関係は良好だった。
それがなぜ急にこんな事になったのだろう・・・。
「・・・・・・宰相様・・・」
ふと、入口から気配がした。
「あぁ・・」
「・・・ジク!入ってきなさい」
入り口に向かって声をかけた。
「・・・・遅くなり申し訳ございません」
「ジク!!どうしたの?その怪我は!!」
右腕から大量に血が流れていた。
「・・・すみません。こちらに戻る途中、隣国の者に見つかってしまい矢を受けました。しかし、かすり傷ですので問題ありません」
右腕から流れる血が痛々しかった。
「・・・・それで、あちらでは今何が起こっている?」
宰相様がジクを見据えて問いかけた。
「はっ。それが、2日前国王が変わりました。するとまもなく、こちらへの攻撃を始めたのです!あまりにも唐突すぎて情報をつかむのが遅くなってしまいました。申し訳ありません」
国王が変わった・・・?
おかしい。あそこの国王はまだ30代後半だったはずだ。
王子もまだ幼く跡を継ぐものがまだ育ってないはず・・・。
「・・・国王が変わるとはどういう事だ」
宰相様も異変に気付いたのだろう。
険しい顔をしてジクを問い詰めた。
「それが、前国王の兄の息子・・・、つまり前国王の甥が国王一家の惨殺後自分がその席に着いてしまったのです!!」
惨殺・・・・。
なんてひどい・・・。
「でも、周りの者はどうしたの!?宰相殿は?」
王家一家を惨殺しても議会の者からの承認がなければ正式な後継者じゃないかぎり跡はつげないはずだ。
「それが・・・、議会の半分は現国王のお味方をしており、残りの者は近しいものを人質にとられ反論の余地をなくされたようです」
なんて事だ!!
そんなに現国王の力が浸透していたなんて!!
「・・・・それで、なぜこちらを狙う?」
冷静に宰相様は先を促した。