12
そんな!!昨日は何も言っていなかった!!
いつも通りふざけてて、何一つそんなそぶりは見せなかった!!
「・・・おまえに心配させまいと何も言われなかったのだろう」
宰相は目を瞑り顔をそむけた。
「そんな!!どうして!!・・・・・・・」
もしかして、近づくなと言ったから?でも、そんなつもりで言ったわけじゃなかった。
「それに、今回はまだ戦う訳ではない。その街で生き残っているものの救出へと向かわれたのだ。今こちらでは隣国に対して使者を送っている。その間、戦が始まる事はない」
「・・・でも!!そんな補償どこにあるんですか!もし、隣国が攻めてきたら?どうして殿下自らが行かなければならないのですか!?」
「少し落ち着け。何も殿下は死に行ったわけじゃない。苦しんでいるものを救いに行かれたのだ」
宰相様に言われてハッとする。
そうだ・・・・。
別に殿下は戦いに行ったわけではない。
なのに、なぜこんなにも乱してしまったんだろう。
「・・・すみません。取り乱してしまいました」
頭を下げ宰相様に謝罪する。
いつもと違う状況だったからだ。
そしてそれに浮かれてしまっていた自分が情けなく思えてきた。
「それで・・・・、殿下はいつお戻りになるのですか?」
「・・・大丈夫か?ローズ。お前らしくないな。殿下がいなくてさみしいのか?」
くっと笑う宰相様の顔を見るといつもの意地の悪い顔をしていた。
・・・・寂しい?
・・・・なんで私が殿下がいなくてさみしがらなきゃいけないの?
違う。
昨日あんな事言ったままで、口もきかずに何かあったらと思ったから。
そうよ!
あんな喧嘩した後にそんな話を聞いてちょっと動揺しただけよ!
大丈夫!宰相様だっておっしゃったじゃない。
ただ負傷したものを救いに行っただけだって。
「・・・・寂しいわけありません!ただ、何も言って下さらなかった事に腹を立てていただけです!」
そうだ!
あれだけ時間があったのに、どうして何も言ってくれなかったの?
そうしたら、こんなに心配することだってなかったのに!!
「そうか?心配のあまり泣くんじゃないかと思ったぞ?」
またもや、にやりと悪そうな顔で私を見降ろしてきた。
「泣くわけないじゃないですか!!戻ってこられたら、しっかりとお説教させていただきます!!」
なぜ、何も言ってくれなかったのか・・・・。と。
「・・・・まぁ、殿下はああ見えても騎士をまとめ上げる団長も兼ねている。それはお前も知っているだろう?殿下が率先して行くのは当然の事だ。しかも、今回はまったくの不意打ちだ。対策を打つことも出来ずあの土地の者を守ることができなかった。殿下は少しでもはやく救出に向かいたかったのだろう」
宰相様はいつも通り席につき仕事を始めた。
「しかし・・・。なぜ、今になって隣国は攻めてきたのでしょうか?あの土地の内紛はもう2年になります。その間攻めるそぶりなど全くありませんでした」
こう見えてもローズも宰相の補佐官だ。
ある程度の国の情勢は知っていた。
「・・・・それには、私も引っ掛かっていたところだ。とにかく、現在の状況を調べるしかないだろう。ローズ、隣国への間者をここに呼べ」
いつもの雰囲気とは全く違う執務室にローズは緊張を走らせ宰相様の言葉に頷いた。