10
「ローズ!ローズってば」
耳障りな声が聞こえてくるが、気のせいだろう。
「ローズ・・・。ごめんってば。許してよぉ・・・」
そう、馬鹿殿下が先程から私の後をついて来ては謝っている。
「もう人前でローズの嫌がる事しないから」
「・・・当たり前です。迷惑なんですよ」
「ローズ!やっと口聞いてくれた!」
しまった!!
うっかり口に出てしまった。
「ローズ!お詫びになんでもするから!そうだ!今日の夕飯にローストチキンを用意するよ!」
はぁ・・・。
無視してもずっと付いてくるし、めんどくさいからガツンといって終わらせるか。
「ローストチキンは昨日食べたのでもう結構です。そのかわり殿下1週間私に近づかないで、ちゃんと仕事してください。そうしたら許してあげます」
「えぇ!!1週間もローズに近づかないなんて無理だよ!!」
「じゃぁ、今後一切口聞きません!」
「うぅ・・・。そんな・・・・」
泣きそうな顔がまるで捨てられた子犬の様だ。
「・・・わかったよ。1週間我慢するよぉ・・・」
「仕事もちゃんとするんですよ?わかりました?」
「わかったよ・・・。じゃぁ、それで許してね」
「もちろんです。では今からさっさと執務室に戻って仕事してください」
「えぇ!?今からなの?」
「そうですよ。嫌なんですか?」
じろりと睨んでやった。
「・・・・執務室に戻るよ。じゃぁ、ローズ元気でね!絶対浮気なんてしちゃダメだよ!!」
浮気も何も殿下の妃でも彼女でもないんですけど・・・?
「・・・はいはい。さっさと行ってください」
そして、私の仕事を減らしてください。
「・・・じゃぁね!1週間の我慢だよ!!」
そういうと泣きながら走って執務室に戻って行った。
「・・・・・・女ですか・・・・」
どちらが女かわかったもんじゃない。
しかし、これで1週間は静かに過ごせる。
そう思うと、頬は緩み思わずニヤけてしまう。
「ふふふ・・・。っといけないいけない。さぁ、仕事にもどろう!」
明日からは宰相様に嫌味を言われなくて済む。
そう考えていたら、知らぬ間にスキップをしていた。
「・・・おい。お前はどこの子供だ・・・」
「!!宰相様!なんですか?いきなり」
おぉ・・・・。びっくりした。いきなり現われないでほしいよ。いつもいつも。
って、あれ?いつの間にか自分の執務室に戻ってきてたよ。
「何かいい事でもあったのか?というか、廊下をスキップして歩くな!」
「スキップって何言ってるんですか?そんな子供みたいな事するわけないじゃないですか!」
「・・・・・」
あれ?何頭抱えてるんだ?
まっ、今日の私はごきげんだから、宰相様のおかなしな行動も目を瞑ってあげよう。
さぁ!仕事をすませてゆっくり家でのんびりするぞぉ!!
1週間なんて普通ですよね。
でも、殿下にとったら1年以上の様に長いんですよ。
だって、毎日のようにローズに付きまとってるんだから・・・・。