血は争えない
もしも親戚縁者に有名人がいたら、ちょっと誇らしい思いがするんじゃないだろうか。
ただし有名は有名でも、犯罪などで有名人になられても困るが。
私の本名は一柳というのだけど、1980年に一柳という名の予備校生が金属バットで両親の脳味噌を叩き割って殺害した事件が発生した。全国を震撼させた有名事件だ。あのときは「犯人と親戚〜?」と聞かれて閉口した。一柳姓は珍しいけど、全国に7000人いるらしい。全員と親戚付き合いするはずもない。
横溝正史に「本陣殺人事件」という推理小説がある。金田一耕助シリーズの嚆矢となった作品だが、あれの舞台も岡山の一柳家という名の旧家だ。読んだ人に「親戚〜?」と聞かれるのも困る。あれはフィクションだよ。
今では憶えている人も少ないだろうが、昔、民社党という名の野党政党があった。そこの党首を長くつとめた人物で春日一幸という人がいた。すでに亡くなってしまっているが、私が若かったころはよくテレビにも登場していた。
私の叔母によると、その春日氏は私の祖母の弟の息子だと言うのである。
子どもの頃から聞かされていたが、私はそれを眉唾だと思っていた。そもそも春日氏とは親戚付き合いをしていないし、戸籍を取り寄せるなどして血縁者だと証明して見せたものもいない。
でも最近になって考え方を変えた。
あるいは本当の話かもしれない、と。
というのは父の姉の息子、つまり私の従兄が高齢になって頭が禿げてきたせいで、風貌が春日一幸氏にそっくりになってきたからである。
やはり血は争えないというべきか。
といっても従兄は、政治とは何の関係もない人生を送ってきた。職を転々としたあげく、小さな会社を起こしてやっと生活の安定を得るところとなった。
血は争えないといっても、それが禿げ頭に関してだけというのもちょっと悲しいかも。




