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美しい夢は獏(ばく)のご馳走  作者: なぎ・けい


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化粧

 学生のときの話だが、うちの大学にもときおり名古屋大学の先生方が出張講義に来ておられた。

 なんせ地元でトップの国立大学の先生だから、私などはいつにも増して緊張して講義を拝聴するのだった。

 そのときの教授の講義の内容は、たぶんシェイクスピア論だったか今では忘れてしまったが、その教授が何の流れか突然こんなことを口にした。

 「女性も25歳を過ぎると、お化粧しなければ見ちゃいられない顔になる」

 人品高潔を絵に描いたようなご立派な教授のこの発言に、教室はますますし〜んとしてしまった。

 そこへ恐れを知らぬ女子学生が、大きな声で「失礼ねっ(笑)!」とツッコミを入れた。

 教授は上品に「ふっふっふっ」と含み笑いを漏らしていたが、当時だから許されたものの、これって今なら完全にセクハラ発言ではないか。

 見ちゃいられない顔になるかどうかは個人差ではないかと私は思うが、それにしても女性は一般的にお化粧が大好きだ。ところが私は女性なのに、これが大嫌いなのである。

 それでも人前に出るマナーとして、お化粧の仕方をおぼえておいたほうがいいのかなあ、と思い化粧道具を一揃え買い整えたことがある。25歳になる前である。

 入門書片手に試行錯誤しつつ初めてお化粧をしてみた。そののち、自分の顔を鏡にしっかと映してみて思った。

 「いや〜ん、妖怪塗り壁みたい!」

 もちろんお化粧だってワザを磨けば上達するのかもしれないが、そこまでする気力が私にはない。どうしてもどうしてもお化粧が欠かせない環境にもない。

 化粧道具は捨ててしまった。

 私は思う。お化粧好きな女性をこそ女性と呼ぶのなら、私のようにお化粧をしないおばさんは「女性方面の方」とだけ呼んで区別してくださればいいのではないか。

 いやいや、はた迷惑だったりして。

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