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美しい夢は獏(ばく)のご馳走  作者: なぎ・けい


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どんぶり

 小学校6年のときの担任だった先生は、いま振り返れば若くてなかなかの美男子だった。子どものころは全然気づいていなかったのだが。

 だが当時も気づいていたのは、この先生がすこぶる軽薄だということだ。

 先生の下の名前はキンヤといったが、女子たちはキンヤ、キンヤと呼び捨てにして、誰一人として先生という敬称を付けて呼ばなかった。それだけでもクラスでの評判のほどがわかる。

 あるときキンヤが授業中にこう言った。

 「おまえら、“どんぶりの背くらべ”という言葉を知ってるか。これは似たり寄ったりのレベルの連中が、“俺のほうがすごい”“いや俺のほうが偉い”と自慢しあう姿をあざ笑っていう言葉だぞ」

 私は「なるほどー」と感心した。どんぶりはどれをとっても大して背の高さが違わない。それなのにそれを比べて、俺が俺がと競い合うなんて確かに滑稽だ。いい言葉を学んだ。

 高校生になって、なにげに国語辞書を開いて眺めていたときのことだ。私はそこに“どんぐりの背くらべ”という成句があることに、はたと気がついた。

 そして私がこれまで“どんぶりの背くらべ”だと信じ込んでいたのは、本当は“どんぐりの背くらべ”であったことを豁然と悟ったのだ。

 私は憤慨した。

 あのキンヤめ。いかに冗談だといっても、いやしくも教育者たるものが、授業中に堂々と子どもに間違ったことを教えるとは何ごとだ、ぷんぷん!

 だが、ここで私はふと気がついた。

 あの先生のことだ。実はあの人ご本人が“どんぐりの背くらべ”という成句を正しく知らず、てっきりそれが“どんぶりの背くらべ”だと思い込んでしまっていたのではないか。

 じゅうぶんありそうな話だ。

 もし同窓会というものに出席する機会があったら、「どっちだったんですか」と是非聞いてみたいと思って何十年と経つが、未だにその機会を得ない。残念だ。

 同じく小学生の時だったが、二つ歳上の従姉と遊んでいたとき、ふと尋ねてみた。「試合で優勝した人はチャンピョンっていうけど、二番目に勝った人のことはなんていうの?」

 従姉はすぐに教えてくれた。「ンヨピンヤチ。」

 「そうなんだー」と、私はその言葉もその後何年もの間、真に受けていた。

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