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元女房役の俺の元に押しかけてくる恋女房?  作者: コーヒー


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5月3週目 対東星学園 ⑤

3回まで東星学園はチャンスらしいチャンスは作れず、対する桜阪学園はチャンスを作るも得点に至ることはなく、両者無得点のまま試合は4回表の東星学園の攻撃に回った。


マウンドには先発の野上が引き続き上がる。


塁上から戻ってきた俺は急いで投球練習に参加すると、マウンド上の野上と打ち合わせをするためマウンドに向かう。


「現状は問題なく投球できているけど、何か違和感はある?」


「大丈夫」


「まだ30球程度だから大丈夫だと思うけど、違和感が出たらすぐに伝えてくれよ。先制点取れずに悪いけど、俺たちで攻撃のリズムを作ろう」


「わかった。任せて」


「よし!この回は上位打線の2番から、失投に気をつけて一人ひとり丁寧に抑えるぞ!」


俺の言葉に頷いて返す野上。口数は少ないのだが、投手としてピッチングにはこだわりをもっている。


チームのエースとして頼もしさを感じながら俺はバッターボックスへと戻る。


「4回、この回もしまっていくぞ!!」


「「「おぉーーー!!!」」」


俺の激にナインが声をあげて盛り上げていく。


打席には2番の田ノ上が左打席に入る。


1球目外角低めへのストレートを要求し、田ノ上はセーフティーバントの構えを取るもバットは空を切りスイング判定。


「ファーストとサードが打球処理優先。野上はピッチャー前以外任せて良いぞ」


2球目もセーフティーバントの可能性があるので松山と羽川へ打球処理を優先するように指示する。


2球目、ストレートを今度は内角高めに要求する。


田ノ上は再度セーフティーバントの構えを取りバットに当てるが、打球は後方のネットに当たってファールとなる。


これで2ストライクに追い込んだ。


俺は野上に3球目のサインを送り、野上もサインを確認して首を縦に振った。


3球目は内角低めにボールを要求してミットを構える。


野上が投げたボールはストライク判定になる軌道でホームベースに向かっている。


田ノ上は迷いなくバットをスイングするが


「なっ!」


「ストライク!バッターアウト!!」


この試合初めて要求したスライダーが田ノ上のバットを躱すように内角低めに決まり、三球三振を奪った。


「ナイスピッチ!」


野上のストレートとチェンジアップの緩急で1巡目は攻めていったが、ここからはスライダーも交えた3球種で攻めていく。


ストレート自体が高校一年生としては希有なものなので、対戦する打者としてはたまったものではないだろう。


続く3番仲村をサードゴロ、4番清川をレフトフライに打ち取ってこの回も三者凡退で抑えた。


桜阪学園ナインは守備位置からベンチへと戻っていく。


続く4回裏の攻撃は4番の羽川から、桜阪学園ベンチは次のチャンスこそ得点を取ろうとベンチ全員で声をあげて盛り上げていく。


「羽川!!一発期待してるぞ!!」


「打て!」


相手のピッチャーはこの回も変わらず下原がマウンドに上がっている。


先頭打者の羽川は2ボール2ストライクからの6球目をレフト前のヒットを放ち出塁した。


「ナイスヒット!!」


「野上も続け!!」


打席には5番の野上が立つ。


ベンチの桜木さんのサインは打て。


ここから下位打線に向かっていくので、可能であれば野上のバッティングでチャンスを広げる事を期待したいところだ。


「(ここを抑えれば上位打線まで打力は期待できないはず。ランナーは俺がなんとかするから絶対に抑えるぞ)」


「(任せろ!)」


新田と下原は野上を必ず抑えると意識を統一し、打者との勝負に集中する。


二度ほど塁上の羽川に対して牽制し、下原は初球を投げる。


「ストライク!!」


外角のストレートに野上はバットを振ることなく見送る。


続く二球目も外角低めへのストレート、コースは微妙なところであったが


「ストライク!!」


外角一杯に決まっていたようで主審はストライクを宣告する。これで2ストライクと追い込まれた。


三球目は外角に2球ほどはずれたボール球となり、カウントは1ボール2ストライク。


四球目は内角のストレート、野上はバットを振るがボールは前に飛ばずファールボールとなる。


打席を一度外し、野上は間を取って再度打席に入る。


五球目、下原が投じたのは内角へのボール。


同じコースに来たボールを野上は打ちに行くが、バットに当たったボールは鈍い金属音とともにショートの前に力のない打球が転がる。


ショートの田ノ上は落ち着いて打球を処理するとセカンドベースのカバーに入った湯川にボールを投げる。


「アウト!」


1塁ランナーの羽川が2塁に到達する前にボールを受けた湯川はそのまま1塁にボールを投げる。


ファーストの清川が身体を伸ばしボールをキャッチする。


「アウト!!」


打者走者の野上も懸命に走るが、ボールの方が先に1塁に到達したため、結果として6-4-3のダブルプレーとなり、0アウト1塁が一転2アウトランナーなしとなってしまった。


「6-4-3のダブルプレー!!ナイスプレー!」


「おっしゃー!!次の打者も抑えて三者凡退で攻撃に移るぞ!!」


東星学園ナインは盛り上がりをみせている。


一方の野上は言葉なくうつむいた様子でベンチに戻ってきている。


「野上ドンマイ!!次で挽回だ!!」


「そうそう、頼りにしてるから下を向くな」


ベンチメンバーが下を向いている野上を暖かく迎え入れていることで、野上もようやく上を向いて次の回の守備に向けて準備を始める。


6番打者として打席に入った松山は1ボール2ストライクからの4球目、外角のスライダーにバットを合わせたが、サードゴロと凡退してしまい3アウト。


4回の攻防も両チーム無得点となり、試合は5回の攻防に移る。


両チーム先発の好投と守備により引き続き投手戦が続くのでは、と両陣営が予想していたが、先にチャンスを掴んだのは東星学園であった。


この回もマウンドにあがった野上が5番打者の本多、6番打者の浜田に連続四球を与えたのだ。


0アウト1塁2塁とピンチを迎えて俺はマウンドの野上の下に向かう。


「野上、どうした?急に制球が乱れてるけど?」


マウンドに集まる内野陣も心配そうに野上の様子を確認している。


「じ、実は」


「実は?」


俺の問いに少し間を置いて答えた回答は


「さっきの打席で右手がしびれていて、、、」


「そういう大事なことは先に言え!!」


まさかのどん詰まりのバッティングが原因の手のしびれであった。


「お前!次同じことしたら即交代させるからな!」


「投げるのに支障はないと思って」


「結果ストライクが入らなかったら一緒だ!このばか!アマ、すぐに準備できるか?」


「もちろん、なんならこのまますぐに投げるよ?」


「投球練習はしっかりやるぞ。野上は一旦外野に下がれ」


俺と天江のやりとりに野上は難色を示す。


「でも俺が作ったピンチだから俺が抑えないと」


「「痺れて制球乱してるやつは早く外野に行け!!」」


俺と天江は珍しく言葉がかぶった。


俺はベンチに合図を送り、桜木さんへ交代の要請をする。


「監督、主審に選手交代を告げてください。ピッチャーを天江君、ショートにセンターの佐藤君、レフトの田川君がセンター、ピッチャーの野上君がレフトです」


桜木さんの耳打ちを聞いて、山口先生が主審に同様の選手交代を告げる。


この選手交代に沸いたのは東星学園ベンチだ。


「おい!野上がマウンドを降りたぞ!」


「怪我か?」


「怪我ならベンチに下がるだろう」


「でもエースの野上が降りるって事は俺たちにとっては大チャンスだ。しかも0アウト1塁2塁!ここでビックイニングを作れたら勝ちはぐっと近づくぞ!」


東星学園ベンチにとって野上の降板は吉報以外の何物でもないため大盛り上がりだ。


一方のマウンドにあがった天江はピンチを一切感じていないのか、いつも通りの表情で投球練習をこなしていく。


規定の球数を投げ終わったあと、最後にマウンドに向かい軽く言葉を交わす。


「緊急登板だけど大丈夫か?」


「さっきも言ったけどこの程度ピンチでも何でもないよ。結果として3アウト取るまでに本塁を踏ませなければ良いんだ」


「あぁそうだな。頼むぞ」


そう声を掛けて本塁に戻る。


東星学園の7番打者加川が打席に入る。


まずは内野陣へ守備シフトのサインを送り、その後に天江へ初球のサインを送る。


加川はバットを寝かせてバントの構えを見せる。


初球、外角のスライダーを低めに要求し、天江もそのコースへボールを投じる。


コンっと音を立てたボールはファースト方向に転がっていく。


「ボールファースト!」


加川のバントは絶妙に勢いを殺しており、ファーストの松山が捕球したタイミングには3塁に送球してもアウトは難しいタイミングとなり、俺は1塁へ投げるよう指示し、打者走者の加川はアウトとなった。


「ナイスバント!!」


「これで1アウト2塁3塁!」


「新田!!ここで決めちまえ!!!」


打席には8番打者の新田が入る。


スクイズ、タッチアップ、ゴロで3塁ランナーが突っ込んでくる可能性もあり、ワンヒットで2塁ランナーが帰って可能性もある。


ベンチの桜木さんの指示は敬遠での満塁勝負。監督役の山口先生が主審に申告敬遠を伝え、状況は1アウト満塁となった。


新田は一瞬残念そうな表情を見せたが、チームにとってのチャンスを喜んでいる。


そんな状況であったが東星学園ベンチではちょっとした問題が発生していた。


「コーチ!ここは俺に行かせてください!!」


下原はヘルメットを被りバットを持って準備をしていたが、この試合の監督として同行していたコーチが待ったをかけているのだ。


「いや、練習試合とはいえ勝つためにはこのチャンスを活かさなければならない。それに投手はお前以外に鳴瀬や大友もいる。チャンスは全員に平等に与えるように監督からも指示されている。ここは代打だ」


そういうとコーチはそれ以上下原の言うことを聞かず、主審に代打を告げてしまった。監督が交代を告げ主審が受理した以上、これ以上下原が声を上げてもどうしようもない。


下原は諦めてベンチに戻ると、代打を指名された控え選手の河本という選手が打席に入った。


「下原、気持ちはわかる。だが相手にチャンスを連続して作られたのも事実。悔しければ次回は今回以上の結果を残せ。まずはチームの応援をして、攻守が入れ替わったらクールダウンを行え。以上だ」


「っ!わかりました!」


下原はそういうと打席に立った河本へ声援を送る。


打席に入った河本という打者の特徴はわからないが、このチャンスで代打を任されるからには控えの中でもバッティングは期待されているのだろう。


天江は初球に内角へのツーシームを投じると河本は見逃すが判定はストライク。続く2球目は高めのストレートがはずれてボールとなる。


3球目、外角のストレートをバットに当てるも力ない打球がファールゾーンに転がり、カウントは1ボール2ストライク。


4球目、外角低めへカーブを要求するが、その際に合わせて天江へある指示を表すサインを合わせて送る。


ボールはコースを外れ、河本もバットを出しそうになるがなんとかスイングを制止してカウントは2ボール2ストライクに。


俺はボールを天江に投げ返し、天江はボールを受けてセットポジションに構える。


打席の河本が打席で構える姿勢を見せた瞬間


「なっ!?」


セットポジションからの超クイック投法でボールを投じる天江。


ボールは内角低め、ストライクゾーンを確実に捉えた軌道でミット目掛けて投げ込まれている。


河本は慌ててバットをスイングするが、ボールはわずかに軌道が変わり、バットの芯を外した打球はワンバウンドでマウンド上の天江に転がっていく。


「走れー!!!」


東星学園ベンチは大声で声援を送るが、天江は難なく打球を処理すると、ボールを本塁の俺の下に送球する。


確実にベースを踏んでキャッチし、打者走者の河本がファーストに駆け込む前に1塁ベース上の松山へ送球する。


「アウト!!」


主審、1塁塁審のどちらもアウトを宣告し、1-2-3の本塁でのゲッツーに抑える事が出来、5回表の大ピンチという状況は無失点で切り抜けることが出来た。


「アマ!ナイスピッチ!」


「100点満点のゲッツーだったな!」


「カナと千晶もナイスプレー!」


意気消沈する東星学園ベンチ、逆にピンチを抑えた桜阪学園ナインは天江の好投を称えながらベンチへと戻っていく。


俺は複雑そうな表情を浮かべている野上に声をかける。


「キャッチボールで感触が問題なければ桜木さんに伝えてマウンドに戻ってもらう。しびれは?」


「もうない!!」


野上ははっと表情を変えてすぐにキャッチボールをしようと俺に促してくる。


試合は5回裏の攻撃から、中盤戦も半ばを迎えた試合の行方はまだどちらにも天秤は傾いていない。


次にチャンスを掴むのはどちらなのか。それは現時点ではまだ誰にもわからなかった。

は現時点ではまだ誰にもわからなかった。

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