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元女房役の俺の元に押しかけてくる恋女房?  作者: コーヒー


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5月3週目 対東星学園 ④

桜阪学園と東星学園の練習試合は1回の攻防が終了し、桜阪学園は1死1塁3塁というチャンスを掴むも、レフトへのフライからのタッチアップに失敗し両者無得点で終わった。


現在は攻守交代で桜阪学園ナインが守備位置に散らばっている。


「ダイエットが順調ならセーフだったわね」


「いやいや。あれは相手のレフトを褒めるべき」


「キャッチャー防具を着けながら、サポートしてくれている桜木さんと会話を交わす。


「打席に立ってみて相手投手の下原くんはどう?」


「初球に狙い球が来たから打ったけど、まだSFFは見てないし評価はなんとも。ただたしかにリリースポイントは見づらいな。下位打線だと厳しいかも」


「ならまずはしっかりと抑えて、次の打席で点を取ってね。こ・ん・ど・こ・そ!」


準備を整えた俺の背を叩き、守備につくよう送り出してくれた。


俺はホームベースに駆け寄ると、主審に遅れたことをお詫びし、代わりに投球練習を受けていた山田にお礼を言って投球練習を引き継ぐ。


そして数球ほど野上のボールを受けると、投球練習終了のタイミングとなって2回表の攻撃がスタートする。


「お前があの金沢だって?当時の面影なさ過ぎだろ」


東星学園の4番打者である清川が右打席に入りながら俺に話しかけてくる。


「あの金沢がどの金沢かは知らないけど、どうも桜阪学園の金沢です」


「お前らには当時散々やられたんだ。当の本人は覚えていませんってか?見てろ、野上の球を打ち砕いてあのときのリベンジだ」


そう言うとバットを構えてじっと野上を睨み付けて投球を待つ清川。


こちらも会話はここまでと野上にサインを送って勝負に集中する。


俺のサインに首を縦に振った野上は投球動作に入る。


投じられた1球目、清川はバットをフルスイングするが


「ストライク!!」


野上の速球が外角に決まり空振りを奪う。


空振りしたバットはボールの下をスイングしており、野上のストレートが清川相手にも十分に通用している。だが清川は典型的なプルヒッターと聞いているので速球には強そうだ。


野上にボールを投げ返し、2球目に投じるボールについてサインを送る。


サインを確認すると、野上は2球目の投球動作に移る。


外角低めに構えたミット目掛けて野上はボールを投げ込む。


「ボ、いやストライク!!」


清川は野上のストレートに対して高さが外れたと予測したんだろうが、実際には野上のストレートは予測よりも伸びていて低め一杯に決まっていた。


「ちっ!」


清川は自分の目測が外れたことにいらだっているのか、舌打ちをして一度打席を外した。


これでカウントは2ストライクと圧倒的に投手有利になった。


これでボール3つまでは余裕を持って勝負することが出来る。3球勝負してもいいし、きわどいコースを攻め続けることもできる。球種もストレートとチェンジアップ、温存する予定だがスライダーもある。


さてさてどうやって攻めようか。


清川が打席に戻ったので野上へ3球目のサインを送る。


俺のサインに何度か首を横に振るが、次のサインで首を縦に振った。


そして投じられた3球目、要求したのは全力のストレート、それを野上は指定のコースに投じる。


清川はバットを全力でスイングする。


「ストライク!バッターアウト!!」


野上のストレートは高めのボールゾーンに構えた俺のミットに収まった。


野上に要求したのは高めの吊り球、そのボールに清川は食い付いたが、結果として空振り三振に終わった。


「くそ!」


悔しそうにベンチに戻る清川の姿を俺は無言で見送った。


この回は続く5番打者本多を三振、6番打者の浜田に四球を与えるが、7番打者の加川をピッチャーゴロに打ち取って2回表の攻撃を抑えた。


野上の投球に感化されたように下原も2回以降はピッチングが冴え渡る。


2回裏、5番打者の野上をセカンドゴロに打ち取り、6番打者の松山は三振、7番打者の小松も三振と三者凡退で終わった。


続く3回も両投手の好投は続く。


8番打者の新田はショートゴロ、9番打者の下原はベンチの指示なのか1度もバットを振ることなく三振に終わった。2巡目に入り、2アウトから1番打者の湯川が打席に入るが、5球目のストレートを打ち上げ、平凡なファーストフライに終わり、3回表の東星学園の攻撃は終了。


この時点で野上の投球数は31球。今のところ順調である。ベンチに戻った際に野上の様子を確認するが、今のところ疲れた様子もない。


「野上君は調子が良さそうね。このあとも大丈夫そう?」


「今のところ球威に異常もないし、問題ないと思う」


打席が回ってくる可能性があるのでプロテクターを外し、レガースをつけたままの状態でベンチに座る俺に桜木さんが話しかけてくる。


「野上に楽をさせるためにもまずは先制点だな。1点を先に取ったチームが流れを呼び込むはず」


「そうね。可能ならこの3回か4回で取りたいわ」


「監督としては何か下原の弱点とか気がついた?」


「いえ、今のところ。ただ気になってることが1点あるわ」


「気になること?」


そう言うと2回裏までの攻撃を記録した配球表を見せされる。


「下原君の投球なんだけど、こことここ」


彼女が指し示したのはある球種を投げたタイミングとその結果。


「まだ推論の段階だけど、ひょっとすると」


その後に続いた言葉に俺もその可能性が高い事を感じる。


「たしかに、まだデータが少ないけど、頭に入れておいたほうがいいな。おい、アマ」


「なんだよ?」


近寄ってきた天江、俺の横に桜木さんがいることに気づくと笑顔を浮かべる。


「桜木さんからオーダーとアドバイス。桜木さんよろしく」


「もう、あなたから言えば良いのに。いい?天江君」


桜木さんが天江に気づいた内容を伝えると、天江は理解した様子を見せる。


「了解!凰花、俺に任せておけ」


そういうと、ちょうど打席の8番打者の安藤が三振に終わってベンチに帰ってきたので、ネクストバッターズサークルに入っていった。


打席には9番の田川が立つ。


だが流石に下原レベルのピッチャーとの対戦ではまだ歯が立たず、なんとかボールをバットに当てたもののボテボテのピッチャーゴロで2アウトとなった。


これで俺たちの攻撃も一巡して、1番打者の天江が二度目の打席に入っていく。


「アマ!次は出塁しろよ」


「ここからチャンス作れ!!」


ベンチからの声援が聞こえているのかそうでないのか、天江は集中した様子で下原の投球を待っている。


「(ここで天江を抑えて、こちらも三者凡退で終わらせて4回表の攻撃につなげる!)」


マウンド上の下原がワインドアップから1球目を投げる。


「(さっきの勝負では初見で打ちづらかったけど、何度も同じ方法で抑えられてたまるか)」


天江のバットは内角に投じられたストレートを捉え、レフト線に鋭い打球が飛ぶ。


「切れろ!!」


下原は打球の行方を追いながらファールになることを願う。


その願いが通じたのか、鋭い当たりではあったが、打球はさらに左方向に切れていき、レフト側のファールゾーンのフェンスにぶつかった。


「ファール!」


打球の行方に下原や東星学園ナインは安堵し、逆に痛烈な打球がファールになり桜阪学園ベンチからはため息が漏れた。


「ちょっと振り出しが早かったか。でも次はフェアゾーンに飛ばせそうだな」


「(こいつ、本気で言ってるのかブラフなのか。でも安易に同じコースを攻めるのは危険だな)」


打席で呟く天江を見て新田は天江への攻め方を変えるべきか悩む。


新田がサイン送るが、なかなかバッテリー間の意図が合わず、何度かのサイン交換の末ようやく下原が首を縦に振った。


2球目、3球目はともに外角へのスライダーが投じられ、どちらもボールゾーンからストライクゾーンに入ってくるきわどいコースを狙ったが,天江はどちらも手を出すことなく見送り、カウントは2ボール1ストライクとなった。


カウントを悪くした4球目、外角低めへのストレートを天江はスイングしたが、今度はライト線ファールゾーンへボールが飛んでいき、カウント2ボール2ストライクとなった。


5球目、6球目もきわどいコースにストレートが投じられるが、天江はカットしてファールを打ち、7球目はボールとなり3ボール2ストライクのフルカウントとなる。


「打て!!天江!!」


「下原!抑えろ!」


両ベンチから二人を応援する声援が飛び交う。


そして8球目、下原は低めに構えられた新田のグラブ目掛けてボールを投じる。


天江はバットを振る動作を見せるが、スイングすることなくボールを見送った。


「ボール、フォアボール!」


天江が見逃したボールは低めに構えたコースを直前で軌道変更した。


バッテリーが選択したのはSFF、天江はそのボールを見極めたのか、そもそもコースが外れていたのかはわからないがバットを振ることなく見送った。結果として2アウトながら塁に出た。


そして先ほど桜木さんと立てた仮説の信頼性が上がる出来事が起こった。


先ほどのSFFも新田は捕球をし損ねている。


恐らくまだ練習中でそこまで多投は出来ないのだろう。この試合3球目だが、ここまで一度も捕球に成功できていない。捕球に自信があれば投球割合がもう少し増えてもおかしくない。


となると狙い球としてSFFは一旦除外しても問題ないはずだ。


頭の中で状況を整理すると、俺はネクストバッターズサークルで足につけていたキャッチャー防具用のレガースを外して打席に入る。


1塁ランナーの天江は隙あらば盗塁しようと大きくリードを取り、塁上から下原を牽制している。


ベンチからのサインは打て、それならチャンスボールが来たら初球から狙おう。


下原は天江の盗塁に警戒しながら何度か牽制を入れる。


そして投じられた1球目、低めに投じられたボールを見送るも低め一杯に収まっておりストライクがコールされる。


2球目、下原がボールを投じるが


「あっ!」


「痛っ!!」


内角に投げようとしたスライダーが引っかかったのか、ボールは大きくコースをはずれ、俺の腰にぶつかった。


下原はすぐに帽子をとって頭を下げてくる。


「大丈夫か?」


キャッチャーの新田も申し訳なさそうに声を掛けてくる。


「痛いけど問題ない。スプレーはほしいかな」


新田には問題ないことを伝え、ベンチから冷却スプレーを持って走ってきた山田に当たった部分にスプレーを噴射してもらい、一塁ベースへと歩いて行く。


どうせならヒットで出塁、もしくは打点を取りたかったが、塁に出れた事を感謝しておこう。


次の打者である佐藤の打撃に期待である。


状況は2アウト1塁2塁、天江の足ならワンヒットでホームに戻ってこれるだろう。


打席に入った佐藤、サインは俺の時と変わらず打て。桜木さんもここでの得点に大きく期待しているのであろう。


佐藤は集中した様子で打席に立っている。


「絶対にここで抑えるぞ、内野は近いところ。外野はバックホーム!」


「「「おぅ!!!」」」


守備につく東星学園ナインは新田の指示に大声で応える。


セットポジションから投球動作に入った下原、1球目が投じられる。


佐藤のバットから金属バットとボールの接触した音が響く。


「セカンド!!」


初球のストレートを捉えた打球は強いゴロとなりセンター方向へと飛んでいく。


「届け!!」


「「「抜けろ!!!」」」


打球を追う湯川と打球がセンターに抜けることを願う桜阪学園ベンチ。


打球は飛び込んだ湯川のグラブに収まり、そのままセカンドベースにカバーに入ったショートの田ノ上にトスされる。


「アウト!!」


1塁ランナーだった俺はゴロになった瞬間に2塁を奪うべく走っていたが、残念ながら打球速度と湯川の好守で2塁に到着する前にボールがセカンドベースにトスされてアウトになった。


「「「湯川!!!ナイスプレー!!!」」」


「あの打球処理は天才過ぎる」


「湯川様々だな!!」


守備位置からベンチに戻って行く東星学園ナインやベンチメンバーは口々に湯川を賞賛している。


逆に初回同様チャンスを作りながら無失点に終わった桜阪学園。


1回から3回まで攻撃が終わり、互いに得点はなく0-0。


試合は中盤戦へと進んでいくのであった。


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