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元女房役の俺の元に押しかけてくる恋女房?  作者: コーヒー


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19/30

4月4週目 練習試合後

4月4週目日曜日の夕方、桜阪学園野球部の室内練習場にてミーティングのため俺は桜木さんから呼び出しを受けていた。


土曜日と日曜日と練習試合を連戦で戦った俺たち野球部は、土曜日の枚方工業高校との試合を9-0でコールド勝ち、続く日曜日に行われた池田南高校との試合も6-1で勝利した。


池田南高校は土曜日に対戦した枚方工業高校と同じ公立高校で、春の地区大会は1回戦で敗退していた。直近では夏の2回戦敗退が最高記録の学校である。


この日のスタメンは前日登板するも1回打者3人しか投げることの出来なかった野上が志願の登板で先発を任された。


スタメンは以下の通り。


1番レフト田川、2番センター安藤、3番セカンド渡部、4番ショート天江、5番ピッチャー野上、6番キャッチャー金沢、7番ライト山田、8番サード長瀬、9番ファースト小松。


控えに羽川、佐藤、松山の3人が回った。


上位打線は前日の練習試合でも打数が少なかったメンバーを配置する形となっている。シニアの経験者が本日は3人ベンチスタートとなるため、守備力は昨日のスタメンよりも劣る形になるが、野上の投球であれば滅多打ちに合う確率は下がるだろうとの判断であった。


試合は野上が6回を被安打1、1四球1死球7奪三振0失点と上々の結果で押さえてくれた。味方のエラーもあり、4回以外は毎回ランナーを出していたが、3塁を踏ませない投球は心強い内容であった。


続く7回からの3イニングを松山が継投すると、9回に連打を浴び1失点して3回被安打3、無四球1失点という結果であった。


打線は田川は4打数1安打と1盗塁、天江がソロホームラン含む4打数2安打2打点と四球が1、野上はツーベース含む4打数2安打1打点、渡部と小松もそれぞれ4打数1安打を放ったが、長瀬、安藤、山田の3人は4打数無安打に終わった。


7回から交代で出場した佐藤と羽川も1打数1安打1打点、松山は1打数無安打ながらも四球1つ奪っていた。


ちなみに俺は4打数2安打2打点と相手校の盗塁を2回封殺した。


そんなこんなで今日の試合に勝利した俺たちはグラウンドの整備を行い、室内練習場で試合後の調整と自主練を各々が行っている。


俺は監督からのミーティングとのことでその場を抜け出したのだが、桜木さんが大好きな天江もミーティングに参加すると駄々をこねる一幕もあったのだが、騒ぎを聞いた桜木さんがミーティングに参加するよりも部員のレベルアップに協力してくれるような周りのことを考えられてサポート力のある男性って素敵よね、という一言を聞いて近くにいた田川や山田の肩をつかんで練習に戻っていった。


ミーティングルームに入ると、桜木さんやスカウティング班の大木さんと広川の2名がすでに席について俺の到着を待っていた。


「遅くなった。申し訳ない」


「金沢くん、私たちもついさっき集まったばかりだから大丈夫だよ」


大木さんが俺の謝罪にフォローを入れてくれる。


「近藤は?」


姿が見えないもう一人のスカウティング班のメンバーのことを尋ねると、今度は桜木さんが応える。


「近藤君は早速昨日と今日の試合の映像を編集に回ってくれているわ。私たちもこのミーティングの後、その作業を手伝う予定よ」


「なら早速始めよう。でも俺が参加してもいいのか?」


「守りの要で各ピッチャーのボールを受けている金沢君の意見を聞くのも重要なことよ」


そういうことかと納得して打ち合わせに入る。


「チームとしての近々の課題はやはりシニア経験者とそれ以外のメンバーのレベルの差ね。広川君、この2試合のデータを出してもらえる」


桜木さんの言葉に広川は手元のノートパソコンを操作する。すると桜木さんの後ろに設置されたモニターに各選手の名前と打撃成績をまとめた数値が表示された。


「バッティングに関しては現状羽川が突出していて、2試合で5打数5安打6打点。続いて天江が8打数5安打2打点。金沢が8打数4安打3打点。野上が1試合で4打数2安打1打点。ここまでが打率5割以上。佐藤が5打数2安打2打点。ここから打率が大きく下がって松山と田川が5打数1安打。渡部が6打数1安打。小松が8打数1安打。安藤、長瀬、山田の3人はそろって6打数0安打。統計上のデータとしてはまだまだ分母が少ないが、上位打線と下位打線で顕著に差が出ているのが現状」


そう言って2試合の試合結果を話す広川に桜木さんは苦い顔をしている。


「6名にはもちろん打数を確保していきたいけど、守備位置との兼ね合いもあるし、平日の打撃練習の時間をもう少し割くべきかしら」


「桜木さん、DH制を導入するのはどうですか?相手の了承があれば打席に立てる選手が一人増えますけど」


「でもそれだとピッチャーとして登板する3人が打席に立てなくなるから打線としては大きくマイナスだわ」


大木さんと桜木さんが議論を交わしている。


大木さんの言うようにDH制を導入すれば打席に立てる打者が一人増える。その分ピッチャーは打席に立つことが出来なくなるので、天江や野上がマウンドに上がると打者としての活躍は出来なくなる。打線としては大きな痛手だが...


「桜木さん、本番の試合ならまだしも練習試合で相手が了承してくれるならDH制はありじゃないか?ピッチャーの3人は投球回数を調整すればなんとかなるんじゃないか」


「そうね・・・5月はそれで回してみて、問題が発生するようであれば再検討しましょうか」


「ありがとうございます」


「いいえ、大木さんは気づいたことがあれば遠慮せずに言ってちょうだいね」


「はい」


「後は近藤君のまとめた映像をもとに個別での対策は明日の全体ミーティングで話しましょうか。金沢君、ピッチャーの3人は実際に受けてみてどう?」


桜木さんは話題を変えて投手陣について俺に質問をしてくる。


「野上と天江はレベルが高いと思うよ。それぞれ個性が違うけど、武器が違うと考えればリードするのも楽しいし」


「松山君はどう?」


「千晶が悪いわけではないけど、やはり2人に比べると落ちるかな。でも今も身長が伸び続けているってことだし、このまま180cmを超えてくるようなら長身の左腕としていいピッチャーに変わるんじゃないかと思うよ」


「たしか去年のスカウト時点では163cmだったのが、この半年で170cmまで伸びたのよね。まだ成長は止まらないと言っていたから筋トレも制限しながらになるし、松山君については成長を見守りながら慎重にいきましょう。怪我で離脱されたら困るからね」


「まぁそれは俺たち全員にいえることだけど」


「そんなこと言われなくてもわかってます」


俺の言葉に真面目な表情で応える桜木さん。


「あなたのダイエットについては予断を許さないわよ。あと数日だけど目標はクリアしているの?」


「うっ、今マイナス0.6kgだからもう少しだよ」


「わかっていると思うけど、食事の量や水を抜くのは許さないわよ。形だけの減量は意味がないからね」


「わかってるよ」


「今日も終わったら、トレーニングメニューを消化「あ、あの?」


俺と桜木さんの会話に大木さんが口を挟む。


「本題から話がそれているので、それとダイエットとかトレーニングって?」


「あーごめん。野球を再開するって決めた際に母ちゃんと桜木さんが結託して俺をダイエットさせるって話になって。桜木さんにトレーニングをサボってないかとか食事をきちんと取っているか監督されているんだ」


「桜木さんと金沢君のお母様が?もしかして…二人ってお付き合いされていたり?


大木さんの言葉におれと桜木さんは顔を見合わせてから応える。


「「ないない」」


妙にタイミングが合ったのは気持ち悪いが、大木さんが想像するような関係ではないのでそれ以上の会話は俺も桜木さんもお互いに気まずい。桜木さんも咳払いをして話を戻す。


「本題に戻りましょうか。天江君はどう?」


「天江は良くも悪くも桜木さんの存在がアクセルとブレーキになるよね。本人に悪気はないだろうけど、やはり自信があるからだろうから自分中心に考えていて、それがプレーにも現れている。昨日は桜木さんが守備練習をさせると目的を伝えていたからゴロを打たせるよう意識していただろうけど、それがなければ自分が投げたいようにリードにも首を振るだろうからね」


「桜木さんと天江は幼馴染みなんだっけ?」


今までパソコンの操作に専念していた近藤が会話に加わる。


「小学校からの同級生というだけよ」


冷たく言い放つ桜木さんに、その場にいた3人は天江の片思いなのだなと改めて理解する。


「天江が登板する際はあらかじめ方針を俺と桜木さんで共有して、それを桜木さんから伝えるというのが一番早いと思う」


「そうね。そうしましょうか」


天江についての手綱は桜木さんにとってもらうことで決まった。


「野上君はどうかしら?」


「自己主張は少ないんだけど、性格はやっぱりピッチャーだ。こちらでセーブしないと投げたがるのは変わらないね」


「彼も1年生であの速球を投げるのだから肩肘の怪我に気をつけないとね。最近は高校生や大学生でも肘の手術が必要になるという話をよく聞くわね」


「そうだな。投球練習は球数を制限していかないとな」


「あなたの代わりのキャッチャーも用意しないといけないし、本当にやることは山ほどあるわね」


「でもやりがいがありそうって顔してるじゃん」


「そうね。監督は私が望んでやっていることなんだから、やり遂げてみせるわ」


不敵な笑みを見せる桜木さん、それを見てサポートできることはしっかりやろうと思った。


その後、さらにミーティングを進め、今日の議題は話し終わり、ミーティングは解散になるのだった。








「金沢君と桜木さん、仲良さそうだったな」


少女は一人、ぽつりと呟いた。

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