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元女房役の俺の元に押しかけてくる恋女房?  作者: コーヒー


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18/30

4月4週目 練習試合③

桜阪学園野球部と枚方工業高校の練習試合は中盤戦に突入していた。


守備につくナインは昨日のミーティング通りに山口先生から主審へ交代の申告が告げられ、以下のようになっている。


ピッチャー天江、キャッチャー金沢、ファースト松山、セカンド小松、サード長瀬、ショート羽川、レフト田川、センター佐藤、ライト山田。


なお打順は7番に長瀬、8番に山田となっている。


「おっしゃー!今日は打ち取って行くから守備はよろしく頼むぞー!」


投球練習が終わり、ボール回しが終わると天江は後ろを守るナインを発奮させるように声を掛ける。その声にナインも奮起するように声をあげていく。


枚方工業高校の攻撃はさきほど痛烈なツーベースを放った4番打者から。


右打席に入ると、こちらもチームを鼓舞するように気合いの声をあげて天江の投球を構えて待つ。


天江に球種のサインを送ると、特に反対する事もなくサインが決まる。


練習の時は自己中心的だが、こういうときのサインは常に従ってくれると嬉しいのだが。そんなことを考えながら構えると、天江は投球動作に入る。


初球は内角にツーシームが投じられる。打者は反応もせず見逃すが主審の判定はストライク。


2番手として出てきた天江の実力を測っているのか。はたまたはなから打ち気がなかったのか。


2球目はアウトローにストレート、これも見送るが主審の判定はストライクで2ストライクとなる。


打者は一度打席を外し、スイングを確かめて打席に戻ってくる。2ストライクと先行されているので、ここからはきわどい球はスイングしてくるだろう。


天江にサインを送り、3球目が投じられる。


ボールは初球と同じ内角に投じられる。打者はスイングをして打ちに来るが、先ほどよりも半個分内側に来て、そこから打者側にさらに少し動いた。初球と同じツーシームに詰まらされ、勢いが殺された打球は三遊間に転がっていく。


サードを守る長瀬が積極的にボールを捕球しようとするが、グラブに当てるものの捕球することが出来ず、しかし幸運なことにカバーに入ろうとしていた羽川の方に打球が転がり、羽川はキャッチすると慌てることなく一塁に送球してアウトにした。


「長瀬ナイスチャレンジ!!次はしっかり捕ろう!羽川はナイスカバー!!」


「くそ!もう一度サードに来い!!」


俺のフォローの言葉にグラブの腹を拳で強く叩いて、守備につく長瀬。


そこから天江はツーシームを軸にゴロを量産していく。


5番打者をショートゴロ、6番打者もセカンドゴロに打ち取って簡単に三者凡退に終わらせて、天江は揚々とベンチに戻っていく。


ベンチに掛ける天江に桜木さんが声を掛ける。


「天江君、注文通りの投球ありがとう。残り2回もお願いできる?」


「凰花!任せとけよ。桜花の頼みなら注文通りにやってみせるさ」


「じゃあ引き続きお願いね」


「任せろ!」


そう言って打席の準備をして機嫌良くネクストバッターズサークルに移動する天江。桜木さんはやれやれと行った表情でそれを見ており、俺たちは桜木さんには従順な天江を見て、飼い主に褒められてご機嫌な大型犬をようだと感じていた。


4回裏の攻撃は9番の田川から。


枚方工業高校の投手は変わらず先発投手の3年生のままである。

相手ベンチのそばでは恐らく控え投手であろう選手がキャッチボールを始めているが、まだ本格的に肩を作っている様子ではないので、交代はもう少し先であろう。


ただ先頭打者である田川に対し、4球続けてボール球を投じてしまい、田川は四球で1塁に出塁した。


そしてここで桜木さんが動いていく。田川に対して初球から盗塁のサインを出した。


そのサインを見て田川は楽しそうに笑みを浮かべる。初心者である彼にとって今は経験を積んでいくことが何よりなのだが、やはり元陸上部の短距離走選手としてはその足を武器に戦える場が出来たと言うことが嬉しいのだろう。


打席には1番の天江が入る。相手バッテリーは2打数2安打でどちらも長打を打っている天江に最大限の警戒を払っているようだ。


1球ファーストへの牽制が入るが、盗塁に注意を払っているかというと不足していると言わざるを得ない。


ピッチャーのモーションと同時に田川は2塁へと走り出す。ボールは外角低めだがストライクゾーンからは外れている。天江はスイングして援護することも出来ただろうが、ここは見逃した。


枚方工業高校のキャッチャーがボールを捕球し、素早く2塁へ送球する。ボールは低い弾道で2塁ベースに到達する。相手のセカンドがキャッチして田川にタッチしにいき、田川も2塁ベースに滑り込む。


タイミングは微妙だが果たして。


2塁の塁審はわずかに考えて右腕を上に上げた。


「アウト!」


「キャッチャーナイス送球!!」


「1アウト大きいぞ!バッター集中していこう」


アウトコールに相手ナインやベンチが盛り上がる。対象に田川は悔しそうに一塁ベンチへと戻ってくる。


「田川ナイスラン、惜しかったぞ」


「次は決めよう!」


ベンチにいるメンバーに励まされるが、田川はそれでも悔しそうで両手を強く握りしめている。


「田川君、スタートのタイミングが少し遅かったわ。でもサイン通り1球目から躊躇なくスタートを切れたのは流石ね。これからも塁に出ればどんどん盗塁のサインを出すから次は期待しているわね。あなたのその足は我が部の大きな武器なんですから」


桜木さんの言葉に最初は悔しさを表したが、その後の言葉を聞いて気持ちを持ち直したのだろう。すぐに攻撃の応援に加わった。


1アウトから1ボールで再開される。


再度打席に入った天江はホームランを狙っているのだろう。相手投手のストレートをフルスイングで打ち返すが、2球連続でレフト線に切れるファールとなった。


そこからさらに1ボ-ルを挟み、2ボール2ストライクからの5球目、強振からミートに切り替えたのだろう天江のスイングは低めのストレートを鋭く打ち返すが、打球の当たりが良すぎたのか相手のショートが守る定位置に飛んでいき、そのままグラブに収まった。


天江は相手ショートを見ながらベンチに戻っていくが、当たり自体は本人的にも悪くなかったのだろう、表情は悔しさを見せてはいるがある程度納得した様子を見せている。


そして2アウトで打席を迎えるのは2番である俺。


試合の流れは相手側に流れているので、三者凡退で終わることだけは避けたい。この打席は甘い球が来るまでは打ちに行くのを控えて、2ストライクからは粘っていこう。


そう考えながら打席に向かったが、桜木さんのサインは違っていた。


初球がストライクなら打ちに行け?


俺は簡単に攻撃を終わらせないことを意識していたが、桜木さんとしては初球を叩くことで強引にでも流れを取り戻せという作戦なのだろう。


俺は了解のサインを送って打席で構える。


相手投手から放たれたボールは高めを大きく外れたためこれは見逃す。


サインを確認すると作戦に変更はなし。


2球目に投じられたのは外角高めのストレート。俺はボールに逆らわずに右方向に打ち返した。ライナー性の打球はファーストの頭上に飛んでいく。枚方工業高校のファーストは懸命に腕を伸ばしながらジャンプするが、打球はその上を通過して、ライトのライン際フェアゾーンでバウンドする。


外角のボールを広角に打ち返すのはリトル時代からの俺の得意技である。今回も上手く打ち返すことが出来た。


相手のライトが懸命に打球に追いつき、ボールを内野に返球する間に俺は2塁に滑り込んでいた。小学生時代なら3塁を狙えていた打球ではあるが、ダイエット中の今の俺ではアウトになる可能性があったのと、ライトの打球処理もスムーズだったので安全策を選んだ。


続く3番佐藤と4番羽川も連打で続き、俺はホームベースに生還し5点目を獲得する。さらに5番の松山に死球を与えたところで相手ベンチは動き、控えで準備していたピッチャーに交代した。


交代した相手のピッチャーは左投げのサイドスロー。球速は先発のピッチャーよりも遅そうではあるが、リリースポイントが見えにくそうな投球フォームをしている。実際に打席に立ってみないとわからないが、体感的には球速以上に感じる可能性も高い。


投球練習が終わり、6番の小松が打席に入り2アウト満塁でプレーが再開される。

桜木さんから小松に出されたサインは初球から打て。出鼻を挫けという意味なのだろう。


交代したばかりの初球として投じられたのは内角低めへのストレート。小松はスイングしてバットに当てるが、やや詰まった打球はショートの正面に転がる。


枚方工業高校のショートは落ち着いて丁寧にゴロを処理してファーストに送球し、小松も懸命に走ったが、判定はアウトだった。


4回を終えて5-0で桜阪学園野球部は大きなリードを保っている。


そしてそれだけのリードを保っていればマウンドに上がる天江は気分良く投球する。


5回表も内野ゴロ3つでアウトを取り、5回裏のこちらの攻撃も長瀬が三振、山田がキャッチャーファールフライ、田川もショートフライと三者凡退で終了した。


続く6回も同様に気分良く投球する天江の前に、枚方工業高校は三者凡退した。


ベンチに戻った天江に桜木さんはねぎらいの声を掛け、嬉しそうな表情で6回裏先頭の打席に入った天江は4球目をはじき返しセンター前へシングルヒットを放ち、これで4打数3安打で猛打賞となった。


ノーアウト1塁で打席に入る俺、桜木さんからのサインは自由に任せる。先ほどとは違い、俺の好きに考えていいとのこと。


先ほどと同じで2ストライクまでは甘い球以外は見逃すことに決めて打席に立つ。


結果として3ボール1ストライクからの5球目もストライクゾーンから外れたボールを見逃し、四球を選ぶことになった。


そして続く佐藤にも四球を与え、満塁のピンチを迎えた枚方工業高校のバッテリーは4番の羽川に走者一掃のツーベースを打たれ8-0となったところで2番手としてあがったピッチャーも降板することになり、3番手のピッチャーに交代した。


その後さらに1点を追加した俺たち桜阪学園は7回から遂に野上がマウンドに上がる。


ピッチャー野上、キャッチャー金沢、ファースト松山、セカンド小松、サード長瀬、ショート天江、レフト羽川、センター佐藤、ライト山田。


野上は待たされた鬱憤を晴らすように豪速球を投げ込んでいる。まだ投球練習の途中ではあるが、枚方工業高校のベンチは3番手として出てきたピッチャーの投球に言葉をなくしていた。


言い方は悪いが、打席に入る前に勝負がついてしまったようだ。


予想は的中し、相手打者たちはなんとかバットを出すが、誰一人当てることが出来ず三者三振で7回の表の攻撃が終わった。


野上はこれからが本番と肩を回しながらベンチに戻ろうとするが、主審の声に驚いた様子を見せる。


「ゲームセット!整列してください」


そう、練習試合は一方的なゲームを防ぐために5回10点、または7回7点差がついた時点でゲームセットになるのだ。


消化不良という表情でチームメイトから促され整列の輪に加わる野上。


そしてホームベース前で再度両チームが整列し、主審を務める相手校の選手からゲームセットと桜阪学園の勝利が告げられる。


そして相手チームやベンチに一礼して俺たちはベンチに戻り、チームとしての初勝利を全員で祝うのであった。


「まだ投げたりないのに」


消化不良の野上をのぞいて...


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