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episode7 真夜中の粛清

 真夜中の歓楽街。

 その裏通りの路地裏で、

 伊波中尉と俺は拳銃を握り、

 渡瀬伍長を待ち伏せした。しばらくすると、


「来ましたぜ」


 と、案内役のトムマウスが小声を発して、

 その視線の先には、

 綺麗な女性を連れた渡瀬伍長の姿があった。


「あの女の人は?」


 俺が問うと、トムマウスは、


「街一番の娼婦ですよ」


 そう答えて、言葉を続ける。


「あの女なら、巻き添えにしてもかまいませんよ」

 

 さらに、こう付け加えた。


「あの娼婦は、かなりの性悪オンナですから」


 そのトムマウスの言葉を聞いても、

 伊波中尉は首を横に振る。


「ダメだ。女性を巻き添えにはできない」

「それなら、自分が行きます。伊波中尉」


 俺の右脚は軍用の義足だ。

 その蹴りの威力は、一撃で人を殺せる。


「よし、軍曹、慎重に殺れよ」

「伊波中尉、一撃で葬ります」


 そう言った直後、俺は、


 ババッ、


 と、路地から飛び出した。


「な、何だ!」


 不意打ちに驚く、渡瀬伍長の真正面から、


「おりゃあッ」


 右足で顔面を蹴り上げた。


 バヂゴォン!


 大きな音を立てて、

 渡瀬伍長の顔は、砕け散る。


「きゃああぁぁぁーッ」


 娼婦が叫び、飛び散った血が綺麗な顔を汚した。


 バタン。


 真後ろに吹き飛んだ、渡瀬伍長の顔は潰れ、

 断末魔をあげる間もなく、絶命したようだ。

 あまりにも悲惨な死に様である。


「よくやった、軍曹」


 路地から伊波中尉とトムマウスが出て来た。

 それでも超絶美人の娼婦は、

 その場に硬直たまま、


「ひゃ、ひゃあッ」

 

 震えながら、見開いた目で、

 無惨な渡瀬伍長の死体を見下ろしている。


「さあ、行こうか」


 そう言った伊波中尉の声は、

 努めて無感情を装っているように聴こえた。

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