episode55 最終章・脱出
夜の町は異様な熱気に包まれていた。
至る所で篝火が焚かれ、人々が熱狂している。
「人獣の王は死んだ。新王は誰だ!」
と、誰が言うと、また別の誰かが、
「ランスロットか、それともヘルメスか?」
大声で応じた。その後、それぞれの支持者が、
「ヘルメス、ヘルメス、ヘルメス」
「ランスロット、ランスロット!」
町の中で大合唱する。
「私は、こんな世界の王にはならないよ」
ランスロットは吐き捨てて、民衆に背を向けた。
だが、その時、俺はパワードスーツ姿のまま、
アリスを探し回っていたのだ。
「よう英雄さん」
「英雄、万歳!」
酔っぱらいに絡まれながらも、
人混みを掻き分け、俺は二人を探した。そして、
「アリス、スズ!」
二人を見つける。
姉妹は全裸にされ、四つん這いの姿勢で、
断頭台に固定されていた。
「この二人は人獣王のメス犬と悪の魔女の姉妹だ」
死刑執行人が言うと、見物人が歓声をあげた。
「殺せ、処刑だ!」
俺は乱暴に見物人を蹴散らしながら、
「何をするんだ。止めろよ!」
怒鳴り声をあげて、断頭台を破壊する。
「ありがとう、義兄さん、きっと助けてくれると」
「私たちは、あなたの事を、ずっと信じていたわ」
俺は二人を助け出して、
その夜のうちに町から脱出した。
「その後、俺はアリスと結婚して農民になった」
辺境の村に移り住み、決して裕福ではないが、
「あなた、ご飯にする、先にお風呂、それとも♡」
穏やかで幸福な日々を送っている。そして、
スズも、この村の呪術師の弟子になり、
「イタイノイタイノトンデイケ〜ッ」
今日も村人の病状の緩和に努めているのだが、
「うぎああああああああああああああああーッ!」
時々、村には悲鳴が響き渡るのだった。
長々とお付き合い頂き、ありがとう御座いました。
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