episode5 夕暮の森のなかで
夕暮れどきの森の奥。
ジャンの亡骸を血のような赤い夕日が照らす。
「これで食糧の支援を受けられるな」
と、伊波中尉が言うと、渡瀬伍長が、
「俺たちは森の便利屋になっちまったのか」
ボヤくように言葉を発した。
だが、異世界に転移してしまった俺たち、
13名のパワードスーツ小隊は、
こうやって生きていくしかないだろう。
「さあ、皆、野営地に戻るぞ」
伊波中尉が言って、小隊は、その場を去った。
一応、証拠のためにジャンの亡骸は、
大和上等兵が担いで持ち帰る。
「伊波さん、俺は隊を抜けて町で暮らすよ」
帰路、渡瀬伍長が歩きながら言った言葉が、
俺の耳にも聞こえた。
そして、この申し出を伊波中尉は、
「分かったよ。だが、」
パワードスーツは持っていかない、
という条件で、許可したようだ。
その翌朝。渡瀬伍長は、
「拳銃と弾は貰って行くぜ」
と、森の野営地から、一人、去って行く。
彼の背中を見送っていた安達一等兵が、
「これから渡瀬伍長は、どうするのかな?」
ポツリと言葉を漏らした。
「まあ、何か仕事して、誰かと結婚するのだろう」
俺は、そう言いながら、
安達一等兵の肩に手を乗せる。
だが、その数日後の事だ。
ランスロットが野営地に姿を現した。
「どうやら、あの渡瀬君がな」
ランスロットの話によると、
渡瀬伍長はギャングのメンバーに加わり、
殺人を犯したというのだ。
「よし、軍曹、二人で町へ行くぞ」
伊波中尉は、そう言って、
腰のホルスターの拳銃の弾をチェックする。
その時、大和上等兵が志願した。
「小隊長、自分も一緒に行きます」
「いや大和は、ここに残ってくれ」
と、命じて、伊波中尉は言葉を続ける。
「隊員の粛清は上官の仕事だからな」