episode49 魔法少女潜入
俺は前回の戦闘で腹部を負傷した。
傷は浅かったのだが、
パワードスーツは損傷してしまう。
「渡瀬の残していつた物があるだろう」
伊波中尉は、そう言うのだが、
渡瀬伍長は俺が殺したのだ。
その遺物を使うのは、あまり良い気がしない。
「だが、そんな事を言っている場合ではないか」
と、俺は、そのパワードスーツを、
引き継ぐことになった。
そして、その日の夕刻に、
「国王派の軍勢が動いたらしい」
伊波中尉が作戦会議から戻り、
隊員を集合させて、現在の状況を説明する。
「密偵の情報によると将軍が自ら軍勢を率いて」
西の街道を進み、町に向かっているという。
「敵は大部隊のため動きは遅いらしい」
だが、俺にとって問題なのは、
スズが密偵として敵に潜入していることだ。
やや声を荒らげて俺は、伊波中尉に質問した。
「なぜ魔法学校の生徒が、そんな危険なことを?」
「俺も詳しくは知らないが本人が志願したらしい」
そして深夜、
スズが傷だらけになって城内に戻って来た。
たまたま夜警だった俺は、
「スズ、大丈夫か?」
と、救護所に担ぎ込む。スズを診た軍医は、
「深い傷は負っておらんよ」
そう言ったのだが、
全身に内出血や擦り傷があり、
スズの裸体は痛々しい。そのスズの話によると、
「あたし、密偵だとバレて捕縛されたの」
そして酷い拷問を受けたという。だが、
「夜、見張りの隙をみて、魔法で逃げてきたの」
という事らしい。しかし、
「なぜ、君は危険な任務に志願したんだよ」
「お姉ちゃんを守るために、何かしたくて」
スズも、今、国王派が劣勢なのは知っていた。
戦争に負ければ国王の側室のアリスは、
処刑されるだろう。
「スズ、心配するな、この城は俺が絶対に守るよ」




