episode30 スズの魔法
大和上等兵たちを皆殺しにした、翌日、
さすがに俺も気分が落ち込んだ。
そして城内の見回りの時に顔を合わせたスズに、
「なんだか、もう全部が嫌になったなよ」
思わず愚痴をこぼしてしまう。
すると、スズは、
「お姉ちゃんを連れ去って逃げちゃえば」
と、唐突に言った。
「だが、そんなことをしても、逃げた先で」
何をすればいいのか、俺には、わからない。
「俺には生活力がないから」
今、この異世界で俺ができることは、
戦闘だけだろう。
「この城で兵隊をするしかないよ、俺は」
そういえば、国王の側室になったアリスは、
現在、幸せに暮らしているのだろうか?
同じ城壁の内側にいても、
「俺とアリスでは、住む世界が違うからな」
「あたしも、お姉ちゃんとは会えないのよ」
そんな立ち話をしていると、
ランスロットが通りがかった。
「君たちは、いつも仲がいいな」
「あたしたち、義兄妹ですから」
スズが、そう応えると、
ランスロットは笑顔を見せて、
「私は急いでいるので、それでは」
と、立ち去ったのだが、
思い出したように、足を止め、
「最近、腰痛が酷くてな、魔法で治るかな」
スズに向かって、そう言ってしまう。
「あっ、やめた方がいいですよ」
「何で、止めるのよ、嫌な感じ」
「それは、危険な魔法なのか?」
「大丈夫ですよ。安全、安全!」
そう言いながら、スズは、
魔法グッズを詰め込んだ鞄から、
例の銀の皿と白い粉を取り出した。
「イタイノイタイノトンデイケ〜ッ」
その結果は、
「うぎゃああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁーっ!」
豪傑のランスロットが悲鳴をあげ、
「だから、止めたんですよ」
「あが、あが、あが、あが」
痛みに言葉も出なくなり、這いつくばった。




