episode3 魔物討伐士ランスロット
小鬼を撃ち殺した渡瀬伍長を、
伊波中尉は叱責した。
「なぜ、命令通りにしないのだ」
「全く、いちいち細かいんだよ」
渡瀬伍長は舌打ちして、
二人は、しばらく睨み合う。
だが、伊波中尉は、
「今は、仲間割れをしている場合ではない」
と、言い、言葉を続けた。
「とりあえず夜が明けるまで、ここで野営だ」
その後、小隊員13名は、
交代で見張りをしながら、一夜を過ごした。
そして、夜明けの頃に、
「あ、あれは、何だ!」
安達一等兵が驚きの声をあげる。
その指さす方向には騎士の一団がいた。
それを見た伊波中尉が、
「あれが、この世界の軍人か」
と、声を漏らす。
その数は30騎ほどか、
その後、騎兵隊は我々の目の前にまで来て、
「私は魔物討伐士ランスロット」
一団の長らしき壮年の男が名乗る。
対する伊波中尉も、
「自分は、連邦共和国軍の伊波中尉です」
と、名乗った。そしてランスロットが、
「貴方がたは、何者ですか?」
と、単刀直入に聞いてくる。
「おそらく異世界から転移してきたと思いますが」
その伊波中尉の言葉を聞いたランスロットは、
一瞬、怪訝な表情を見せたが、
結局、二人の代表者は、しばらく話し合って、
以下の条約を締結した。
・我々13人は基本的に森の中に野営する
・隊員が町に出る時はパワードスーツを脱ぐ
・我々はランスロットの要請に協力する
・その協力の見返りに食糧等の物資の支援を受ける
この単純な取り決めにより、
小隊は当面の間、生活には困らなくなった。
しかし、俺は、
「小隊長、我々は元の世界に帰れるのでしょうか」
と、不安になる。その時、
地面に寝転んでいた渡瀬伍長が、言葉を発した。
「元の世界に戻っても、俺たちは戦争中だよ」