episode29 皆殺しの挽歌
「テメェら、殺りやがったな!」
大和上等兵が怒声をあげて、突っ込んできた。
そして、彼は武蔵上等兵を、
ガツンッ!
強烈に蹴り飛ばす。
ドシャァン。
と、転倒したが武蔵上等兵に対して、
至近距離から、
6連装ロケットランチャーで狙う、大和上等兵。
それでも、武蔵上等兵は、
「この、ならず者野郎が!」
怒鳴り声をあげ、
大型ショットガンの銃口を向けた。
「うるさい、死にやがれ、武蔵」
「死ぬのは、大和、お前だよ!」
俺は、そこへと駆け寄りながら、
「二人とも、止めろ、撃つな!」
と、制止しようとしたが、同時に、
ババババババババーン。
傍らにいた安達一等兵が、
大和上等兵へ向け機関銃を連射する。
この距離なら、
パワードスーツの装甲も貫通するだろう。
「あがあぁぁッ」
全身に銃弾を浴びた、大和上等兵は、
バタリ、
と、その場に倒れた。
「や、大和!」
俺は瀕死の大和上等兵を抱き起こしたが、
「ぐ、軍曹」
力なく声を漏らして、大和上等兵は絶命する。
それでも辺りには断続的に銃声が響き、
戦闘は続いていた。
バババーン、バババーン、バババーン。
そして、その後、
この農村での戦闘は20分程で終わり、
脱走兵四人は、全員が死亡する。
武蔵上等兵は、
「全く、馬鹿な奴らだ」
死体を見下ろしながら言葉を吐き捨てた。
だが、その横では伊波中尉が、
やや悲しそうな顔をして、
「農村の迷惑にならないように、死体は」
山の中に埋めるようにと、小隊に指示する。
「俺たちは、なぜ、この異世界に来たのだろう」
俺は、そう思いながら四人の死体を埋め、
夕暮れ時に、小隊は城へと戻った。
西の空には、血のような太真っ赤な陽が沈む。




