episode26 思惑
人獣の精鋭部隊を撃破した俺たちは、
屯所に帰還して戦況を伊波中尉に報告した。
「ご苦労だった、軍曹」
そう伊波中尉が言うと、安達一等兵が、
コーヒーを淹れてくれる。
「ご苦労さまでした」
「ありがとう、安達」
俺はコーヒーを一口飲み、
「なぜ敵は100名という、少数で来たのでしょう」
と、疑問に思っていた事を口に出した。
これに応えたのは、屯所に顔を出していた、
密偵のトムマウスである。
「将軍派は、実は内部がバラバラなんですよ」
彼の話によると、
将軍派は急激に兵員が増え、
「全く統率が取れていない状況なのです」
この話を聞いて、伊波中尉が呟いた。
「敵も上手くはいっていないのだな」
そして、その日の夕食の後、
「軍曹、ちょっと、お話が」
と、俺は大和上等兵に声をかけられ、
二人は屯所の外に出た。
「単刀直入に言います。軍曹は今後も」
真剣な顔で言葉を発した彼は、こう話を続ける。
「伊波中尉に従って国王派に付くのですか?」
「お前は将軍派に寝返るつもりなのか、大和」
「そういうわけでは、ありません。我々なら」
独立しても、第三極になれるはずだと、
大和上等兵は語る。
「第三極っていても、我々は、たったの12人だぞ」
「人々は、我々を伝説の英雄と同一視しています」
だから、我々が挙兵すれば、
「支持する人は、かなりの数がいるはずです」
と、大和上等兵は力説した。
「国王も将軍も、自らの権力のためだけに」
戦争をしていると、彼は主張する。
それは、それで正しい意見だろう。
だが俺は同意できない。
「軍人が野心なんて持つとロクなことにならんぞ」
「自分は、もう連邦共和国の軍人ではありません」
大和上等兵は俺を真正面から見て言った。




