episode24 異世界の情勢
「権力と金貨が支配する世界に女性の自由はない」
俺は、そう思った。
その朝、アリスは国王の側室になるために、
侍従と共に城の奥へと向う。
そして午後にはアリスの妹のスズから、
「お姉ちゃんのこと残念だったね」
と、慰められた。しかし、
「アリスが、あの生活から抜け出せたんだ」
だから、それだけでも良かったのだと、俺は、
自分に言い聞かせる。それに、
「これからアリスは何不自由なく暮らせるしな」
そう思い、寂しさを押し殺した。
それでもスズは、
「だけど、お姉ちゃんは軍曹さんの事をね」
そう言って、こう言葉を続ける。
「本当に好きだったみたいだよ」
今からでもアリスを取り戻したい。
だが、それは出来ないことだ。
同じ城壁の内側にいても、
俺とアリスとの距離は、はてしなく遠かった。
「それでも、あたしは軍曹さんの妹だよ」
「ありがとうな、スズ、俺たちは兄妹だ」
俺には、そんな出来事もあったのだが、
この異世界の情勢は刻一刻と変化している。
一般市民から弾圧された人獣は町から逃れ、
「南の平原に集まっているようですぜ」
屯所に顔を出した密偵のトムマウスは言った。
「その迫害された人獣はですね、当然、将軍派に」
合流することになる。そして、
「今や将軍の勢力は8000人を超えていますよ」
これは脅威であった。
国王派は近衛兵と町の義勇軍を合わせても、
せいぜい2500人といったところだろう。
「数では完全に劣勢だ」
そう言いながら伊波中尉は渋い表情を見せる。
それでも町の世論は、
「今こそ、敵に総攻撃を仕掛ける時だ」
「人獣を殲滅するチャンスが到来した」
と、好戦的である。
この異世界の人々は戦争と虐殺で、
神経が狂いだしているのだろう。




