episode2 闇の中の小鬼
実は俺は、新兵の頃に惑星マーズでの戦闘で、
右脚を失っている。
この負傷で除隊したのだが、後に、
高性能の軍用義足が開発され、
「この義足の試験運用のために再入隊しないか」
と、軍の関係者から声をかけられ、
その後は、銀河を飛び回り、戦闘に参加した。
そして今では軍曹を務めている。
それが、なぜ異世界へ来てしまったのか?
「軍曹、我々は、囲まれていますよ」
暗闇の森の中で、大和上等兵が言った。
俺もパワードスーツのゴーグルを、
熱感知モードに切り替え、辺りを見渡すと、
「な、なんだ?」
グルリと我々を囲む、小鬼の群が、
木々の間から、こちらを見ている。
「小隊長、数は30、いや50匹くらいです」
と、通信兵の安達一等兵が、
伊波中尉に報告した。
俺も、伊波中尉の側まで近寄って、
「どうしますか?」
そう聞いてみたのだが、
「始めてみるエイリアンだな。どうしたものか」
伊波中尉も対処に迷っているようだ。
そこへ大和上等兵が進言する。
「いえ、エイリアンというより魔物でしょう」
「コイツらには知性は感じませんよ、小隊長」
と、言ったのは安達一等兵だった。
「よし、威嚇初撃で追い払え」
伊波中尉の指示でパワードスーツ小隊は、
ババーン、ババーン、ババーン、ババーン。
機関銃を連射する。
俺たちを取り囲んでいた小鬼は、驚き、
「ウギャーッ」
「ウゴォーッ」
「ウガァーッ」
と、叫んで、一目散に森の奥へと逃げ去った。
だが、三匹の小鬼が全身に銃弾を受け、
地面に転がり、死んでいる。
「狙って撃ったのは誰だ。威嚇だと言っただろう」
「自分ですよ、伊波中尉。殺してもいいでしょう」
不敵な態度で名乗り出たのは、
ベテラン隊員の渡瀬伍長であった。




