episode15 戦争前夜
その日の夜、森のは静かだった。
パワードスーツの整備を終えた俺は、
ただ、何となく、夜空を眺める。
「この異世界の夜は静穏すぎて」
その闇は、あまりにも深い。
だが夜空に見える星々は綺麗だ。
俺は、今まで心に余裕がなかったのか、
「気にも留めなかった事なのだが」
この異世界の夜空には大きな星が煌めき、
頻繁に流れ星が降り落ちてくる。
「まるで宇宙空間にいるようだ」
しかし、今、この異世界には、
社会を二分する戦争が始まろうとしていた。
「軍曹、まだ起きていたのか?」
不意に伊波中尉から声をかけられ、俺は、
「なぜ人は戦争をするのでしょうか?」
と、質問を発してしまう。
「俺には解らない事だな」
そう答えた伊波中尉は言葉を続ける。
「しかしな、知的生命体は銀河のどこへ行っても」
争っている。その事は俺も、よく知っていた。
それでも、
「俺たちは平和のために戦っていたのでしょうか」
「連邦共和国軍は、銀河の秩序のため戦っている」
「それは欺瞞でしょう。権力者は、利権のために」
戦争をして、俺たち兵士は利用されているのだ。
「だがな、いつの時代も、必死に戦う兵士がいる」
と、伊波中尉は言って、こんな話を始めた。
「遥か昔のことだがな、惑星アマテラスの偉人は」
こう説いたと言う。
「争いと死。それと性的欲求だけが、人間の真理」
さらに、こう付け加えた。
「森羅万象は互い対立して消滅するまで衝突する」
そして対立する、
「二極の力が拮抗することによってのみ、宇宙の」
バランスは保たれ、
「この世界の全ての存在は、物質として成立する」
そう語りながら、
伊波中尉は夜空を見あげていた。
「なあ、軍曹。あの星の輝きには、善も悪もない」




