episode13 魔法少女
アリスの妹スズは、妖艶な姉とは対照的に、
明るく天真爛漫な少女であった。
「はじめまして、スズです」
俺のホテルの部屋に、
アリスと一緒に見舞いに来たスズは、
ペコリと頭を下げる。
「ごめんなさい。あたしの為に」
「いや、油断した俺が悪いんだ」
そう言いながらも、
「痛ててッ」
傷の痛みに顔を歪める俺を見て、スズは、
「やっぱり痛みますよね」
そう言いながら、
「魔法で傷は治せないけど、痛みの緩和なら」
と、おもむろに鞄から、
銀の皿と白い粉末を取り出した。そして、
「イタイノイタイノトンデイケ〜」
呪文を唱えながらサラサラと白い粉を、
銀の皿の上に乗せる。
「これを一口、舐めれば痛みが和らぎます」
と、俺の前に差し出した。
コレは麻薬ではないのかと疑いながらも、
スズの純粋そうな目を見た俺は、
ペロリ。
銀の皿に盛られた白い粉を舐めた。
だが、次の瞬間。
「ぎゃあああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁ〜ッ!」
とんでもない痛みに、俺は絶叫する。
「ごめんなさい。お塩と砂糖を間違えた」
スズは謝るのだが、この娘は本当に、
魔法学校の優秀な生徒なのだろうか?
「ハハハハハハッ」
その様子を見ていたアリスは爆笑していた。
「おいおい、笑いごとじゃないよ」
「いや、でも元気そうでよかった」
そう言いながらも、
アリスの笑いは止まらないようだ。
「ヒヒヒヒッ、マジ、ウケる」
「ウケてんじゃねえよ、馬鹿」
そこへランスロットも現れる。
「やあ、楽しそうだね」
「楽しくありませんよ」
「両手に花、羨ましい」
最初は和気あいあいとした雰囲気だったが、
その後、ランスロットは、
「君たちは外してくれないかな」
アリスとスズを退出させた。




