バカ
「はーあ。今日も疲れたぁ」
「お疲れ様です。オブザーバー様」
「名前で呼んでよ」
「……はい」
「名前」
「……申し訳ありません。オブザーバー様のお名前を、忘れてしまいました」
「部下なんだからちゃんとしてよね。リセ。私はリセ。気に入ってるんだから」
「はい。リセ様。業務連絡があるのですが」
「明日にしてくれない? もう今日疲れちゃって。どんだけの書類片づけて、どんだけの指示出したと思う? もう心労やばいんだけど。そのうえいつ殺されるかもわかったもんじゃないから、教団の敵になりそうなスキルの情報も調べとかなくちゃいけないし。もう最悪。一周まわってゴミスキルだよこんなの」
「しかしリセ様。あなた様の《観測者》は、神々に与えられた恩寵なのですから……」
「呪いだよこんなの。しかも、人が死ぬたびに、私がちゃんと適切な情報を伝えられなかったからだっていう人もいるし」
「そうなのですか? もし望まれるなら、特定して処罰を……」
「馬鹿なの? いるだろうなぁっていう想像だよ。私、こう見えて責任感強いから」
「はい。私もそう思います。それゆえ、人としてお慕い申し上げているのです」
「ならちゃんと名前覚えてよ、バカ」
「……私の名前はバカではありません」
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