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この連載作品は未完結のまま約3ヶ月以上の間、更新されていません。

ゼロの行進

作者:ふんころ
野球。

それは時代の流れとともに変化を遂げてきた。
 技術の進歩、情報の共有、高野連の刷新――いくつもの困難と議論を乗り越えたその先に、ようやくたどり着いた境地があった。
 それは、性別を問わず、誰もが同じ土を踏める世界。
 ユニフォームに違いはなく、試合に上下の別もない。全ての選手が等しく、「甲子園」という夢に挑むことを許されたのだ。

 そしてもうひとつ――変化は、選手たちの背中にも訪れた。
 かつて、高校野球の登録人数は20人と定められていた。背番号は1から20まで。それが常識であり、不動の伝統とされてきた。
 だが、ある年、高野連の規定が静かに改定された。補欠枠の見直し、安全管理、競技の多様化……そのすべてが絡み合い、新たな一桁の背番号が生まれたのだ。
 
 歴史上、甲子園で誰も背負ったことのないその数字に、最初に腕を通したのは、ある一人の少年だった。

 ――20XX年夏。

 その年の甲子園は、異様な熱気に包まれていた。
 誰もが注目したのは、地方大会から名を轟かせた
選手。
 開幕から彼の持つ木製バットは炎の如く燃え上がる。

ホームランを量産し、記録を次々と塗り替えていった。
 そして、ついに大会15本目の本塁打――前人未到の数字を、ライトスタンドへと突き刺した。

 「ゼロの怪物」

 実況がそう呼んだ瞬間、スタジアムは静寂に包まれた。

 だが、彼の伝説はそれだけにとどまらなかった。
 次の試合、彼はバットをマウンドに置き、グローブをはめて現れた。
 左腕を振るたびに唸りを上げ、観客席のどよめきはやがて驚愕に変わる。
 防御率は驚異の0点台。打って、投げて、支配する。
 一人の高校球児が、「一人で野球をしている」とさえ言われた。

 ある少年は、そのバックスクリーン直撃の一撃に憧れた。
 ある少女は、その孤高のマウンドさばきに胸を焦がした。

 甲子園で“付けることの許されなかった”数字を、あえて背負った少年。
 彼は、過去でも未来でもなく、「今」という瞬間に、新たな道を刻んだ。

 0――それは、始まりであり、何者にもなれる可能性の象徴。
 「ゼロの行進」は、ここから始まった。

1話
2025/05/06 20:34
2話
2025/05/06 20:35
3話
2025/05/13 20:54
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