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ビューティーマシンMk-II

「どこが結果オーライだ! 誰がファンキーだ! この髪型で街歩けるか! 今すぐ元に戻せコノヤロー!!」

達也は、頭の巨大なアフロヘアーをわさわさ揺らしながら、アクアに掴みかからんばかりの勢いで怒鳴り散らしていた。その剣幕は、先ほどの「殺す気かー!!」の時よりも、ある意味具体的で、そして切実だ。


「タツヤ、落ち着け! 気持ちは痛いほど分かるが、今は冷静になるんだ!」

マリアが、達也の肩を掴んで必死になだめようとする。しかし、今の達也は完全に怒りモードに入っており、なかなか収まらない。


「わーわー! 二人ともストップストップ! こんなボロボロの研究室でこれ以上暴れたら、私たち本当に生き埋めになっちゃうよー!」

リリアも、達也とアクアの間に割って入ろうとするが、怒り狂う(そしてアフロで視界が悪い)達也の勢いに少し押され気味だ。


そんな大混乱の中、当のトラブルメーカーであるアクアは、腕を組んで「うーん」と少しだけ考える素振りを見せた後、まるで大きな譲歩をするかのように、ポンと手を打った。

「あーもう、分かった分かった! そんなにそのファンキーなアフロが気に入らないなら、しょうがないなぁ。僕も鬼じゃないからね!」


そして、彼女は研究室のさらに奥、爆発の被害が比較的少なかった区画を指さした。そこには、先ほどの実験装置とはまた別の、少しだけ洗練された(ように見えるが、やはり怪しげな)機械が鎮座している。


「実はね、あっちにもう一台、とっておきの秘密兵器があるんだよねー。その名も『分子再構成型ビューティートリートメント・アンド・ヘアメイキングマシーン・プロトタイプMk-II(改良版)』! 長い? じゃあ『ビューティーマシンMk-II』でいいや!」

アクアは、やけにキラキラした目で、その機械を指さしながら説明する。

「こないだの爆発で、もしかしたらちょっと調整が狂っちゃったかもしれないけど、あれを使えば、その芸術的なアフロも、もしかしたら元のサラサラ金髪に戻せる…かもしれないし、あるいは、もっと別の、とーってもエキサイティングでアバンギャルドな髪型になっちゃうかもしれないけど! どう? もう一回、僕のサイエンティフィックな施術、受けてみない?」

彼女は、期待に満ちた目で達也を見つめている。全く反省の色はない。


その、あまりにも反省の色がなく、むしろさらに危険な実験を提案してくるアクアの態度に、達也の中で最後の理性の糸がプツンと切れた。


「ふっっっっっっっっっっっざけるなああああああああああああああああああ!!!!!!!!」


達也の絶叫が、崩れかけた研究室に木霊する!

「もうお前の実験台になるのは真っ平ごめんだ! いい加減にしろこのポンコツマッドサイエンティストが! 二度と俺の髪の毛一本たりとも触るなああああああっ!!!!」

彼は、アフロをさらにわさわさと激しく揺らしながら、本気でアクアに飛びかかろうと暴れ始めた!


「わわわっ! タツヤ、よせ!」「タツヤちゃん、落ち着いてってば!」

さすがにこれはまずいと、マリアとリリアが二人掛かりで、暴れる達也を羽交い絞めにして抑えつけようとする!

「離せ! 離せこのー! 俺はこいつを八つ裂きにしないと気が済まないんだー!」

「きゃー! タツヤちゃんの野生が目覚めちゃったー!」


達也がマリアとリリアに羽交い絞めにされ、じたばたと空しく手足を動かしているのを、アクアは少しだけ残念そうな顔で見つめていた。

「えー? 残念だなぁ。あのMk-II、結構自信作だったんだけどなー。超音波振動で頭皮をマッサージしつつ、ナノレベルで毛髪構造を再構築して、さらにマイナスイオンでキューティクルを保護するっていう、夢のようなマシンだったのに…。まあ、気が変わったら、いつでも言ってねー」

彼女は、全く懲りていない様子で、ケロリと言い放った。


研究室の中は、怒り狂うアフロ頭の達也と、それを必死で抑えるマリアとリリア、そして全く反省していないアクアという、もはや収拾のつかないカオスな状況に陥っていた。


「タツヤ、落ち着け! 早まるな!」「タツヤちゃん、気持ちは分かるけど、今は抑えて抑えて!」

マリアとリリアが二人掛かりで、暴れる達也を羽交い絞めにし、必死で抑えつけようとする! 研究室は既に半壊状態だというのに、この騒ぎでさらに被害が拡大しそうだ。


「離せ! 離せこのー! 俺はこいつ(アクア)のそのアホ毛みたいなツインテールを、一本残らず冷凍庫の霜取りブラシにしてやらないと気が済まないんだー!」

達也は、意味不明だがとにかく怒りに満ちた言葉を叫びながら、足をバタつかせる!


その時だった!


暴れる達也の足が、床に剥き出しになっていた赤い配線か、あるいは落ちていた何かのリモコンのようなものを、グシャッと踏みつけてしまったのだ!


ピピピピピピピピ!!!! ビーーーーッ! ビーーーーッ!


次の瞬間、部屋の奥で比較的無事だった、アクアが先ほど指さした「分子再構成型ビューティートリートメント・アンド・ヘアメイキングマシーン・プロトタイプMk-II(長い!)」が、けたたましい警告音と共に、禍々しい紫色の光を放ちながら激しく振動を始めた!


「警告! エネルギーリアクター圧力、臨界点を大幅に超過! 制御システム、完全沈黙! 制御不能! 制御不能! 緊急停止シーケンス、作動シマセン! ヤバイデス! ヤバイデス!」

どこからともなく、合成音声のような機械的な声が、緊迫感ゼロの棒読みで危険を告げる!


さっきまで「えー? 残念だなぁ」と飄々としていたアクアも、さすがにその状況には顔面蒼白になった!

「うっそ!? なんで!? あれ、フェイルセーフどころか、フェイルセイフ・オブ・フェイルセイフの、五重の安全装置をかけてたはずなのに! まさか、さっきの爆発の衝撃で、その安全装置ごと全部イカれちゃったとか!? あわわわわ、やばいやばいやばい! みんな、今すぐ床に伏せてーーーっ!! 伏せなきゃ死ぬぞコレはーーーっ!!」


アクアが叫び終わるか終わらないかのうちに、Mk-II(とアクアが呼んだ機械)は、先ほどの爆発がまるで線香花火だったかのように思えるほどの、凄まじい閃光と轟音を放った!


**ゴゴゴゴゴゴゴッッッ!!!ドッッッッッカアアアアアアンンン!!!


前回を遥かに凌ぐ大爆発が研究室を揺るがし、壁も天井も吹き飛んだ! 黒煙がもうもうと立ち込め、凄まじい衝撃波が周囲を薙ぎ払う。


「きゃああああああっ!」リリアとマリアの悲鳴が、爆音にかき消される。


「うわあああああああああ! ボ、ボ、僕の! 僕の愛する研究所がぁぁぁーーーーっ!! もうダメだ! 今度こそおしまいだぁぁぁーーーっ!!」

アクアの、もはや絶叫に近い悲痛な叫びが、煙の中でこだました。


しばらくして、もうもうと立ち込める煙と粉塵が少しずつ晴れてくると、そこには信じられない光景が広がっていた。研究室は完全に瓦礫の山と化し、原型を留めているものはほとんどない。そして、その瓦礫の山の中から、ゴホゴホと咳き込みながら、四つの人影が這い出してきた。


マリアは顔中ススだらけになりながらも、リリアを庇うようにして立ち上がり、「…全員、無事か…?」とかろうじて声を出す。リリアも咳き込みながら頷き、自分の頭を触っては首を傾げている。どうやら、前回のアフロは健在のようだ。


アクアは、もはや言葉もなく、自分の研究室だった場所を見つめ、その場にへたり込んで泣き崩れていた。「僕の…僕の全てが……うわあああん…」その頭も、もちろん見事な爆発アフロのままだ。


そして、達也。

彼は、頭に手をやり、恐る恐るその感触を確かめた。

「……あれ?」

モコモコとした感触がない。指に絡まるのは、いつもの…いや、異世界に来てからの、サラサラとした金髪だった。


「お、おお…! 俺のアフロが…アフロが元に戻ってる!」

なぜか今回の爆発では、達也のアフロだけが綺麗さっぱり消え去り、元の髪型に戻っていたのだ!


しかし、その喜びも束の間。目の前の惨状と、泣き崩れるアフロ頭のアクアを見て、達也の中で何かがブチ切れた。


「いい加減にしろ! このポンコツ発明家が!」

達也は、元に戻った髪を振り乱しながら、アクアに向かって叫んだ!

「お前は本当に、爆発するものしか作れんのかーーーーーっ!!!!」


その魂からのツッコミは、瓦礫と化した研究室に虚しく響き渡るのだった。

爆発オチいい加減やめます

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