Chapter6: YES OR NO
彼らに注意を受けはしたものの、それでも新しい仲間に対する不信感は変わらなかった。
彼らに比べると、アメリオやボニートは素直だった。
彼女の注意を聞く姿勢はあったし、取り入れようともしていた。
しかしリオやルイは、頭ごなしに否定するだけでやろうともしないのだった。
自然、アメリオやボニートと食事をする機会が、多くなっていった。
「またポーション頼むわ」
「ええー、早くない? まさかアンタら転売してるんじゃないでしょうね」
「バカ! オレら、そこまでクソじゃねえわ!」
「オレら、最近、ドラゴンを倒そうと思っててさ。ドラゴン倒せるようになったら、受けられないクエストなんて無いだろ」
「へえ。すごいじゃん」
「オレらだって夢をもって冒険者になったからな。その夢に近づきたい気持ちはあるんだよ」
「……」
黙る彼女に、アメリオがいった。
「…あの頃は悪かったな」
「いや…べつに…」
「オマエ、あの頃、仕事の話しかしないしさあ」
「グチは、仲間の時にいってよ」
「なんだかんだいってオレらは先輩だったしさ、いいにくいのよ。後輩に『できません』って。恥ずかしいしさ…」
「……」
「オレらそれまで『臆病なヤツが生き残る』ってのが常識だったのに、もっと大胆にいけっていわれても、切り替えが追いつかなくてさ…」
「……」
「オマエがいれば死なないって、頭では理解してても、やっぱりケガすりゃ痛いし、痛いのはイヤなんだよ。だからいけなくて…」
「……」
「オマエのダメ出しにちゃんと傷ついて、オレらこの状態から、とにかく逃げ出したいと思ってさ…」
「向き合ってよッ!」
「オマエがいなくなって、ホッとしたけど…」
「ホッとしたのかよッ!」
「でも、このままじゃダメだな、とも思ってさ…」
照れくさそうに頭をかく2人。
ミアは、ハッとした。
どこかで、しょせんゲーム、と思っていたかもしれない。
でもゲームの中に生きる彼らにとって、ここは『現実』なのだ。
だとしたら…
知らず知らずのうちに私は、転生前にされてきたことを、彼らにしてしまっていたのでは?
チートになって、昔の自分のことを忘れていたのでは?
自分の態度を思い出し、彼女は激しく動揺した。
「…ごめんなさい」
彼女は、涙を流していった。
「…私は間違っていたわ」
アメリオとボニートは顔を見合わせた。
「今さら?」
そして彼女は続けた。
「今すぐ、リオとルイとはパーティを解消して、あなたたちともう一度組み直すわ」
2人はあわてた。
「ちょっ…ちょっ! 待て!」
「オマエ、ずっとムチャクチャだと思ってたけど、やっぱりムチャクチャだな」
「低ランクならともかく、上位ランクでそんなことしたら、まわりのパーティから総スカンだぞ」
「いいのよ! あなたたちを見棄てたりしないわ!」
「オマエ! 自分に酔ってるだけだろ!」
彼らは、なんとか彼女を思い止まらせようとした。
「オレらが良くないんだって! オマエはどうなろうが1人で生きていけるだろうけど、オレらはギルド仲間の助けがなければやっていけねえんだよ」
「いいんだよ、オレらは。オマエが仲間だったことは、すごいラッキーだったんだから」
喜ぶと思っていた2人がそうでもない反応を見せたので、彼女は少し冷静になった。
「ああ、そう」
「そうだよ」
思い止まりそうな彼女を見て、2人も安心した。
「でも、あいかわらずヘンな所で良いヤツだな」
「ヘンじゃないわよ」
「あと別に嫌味とかでいうんじゃないけど、仲間は大事にしてやれよ」