Chapter5: SPEAK NO EVIL
彼女の評判はすでに上がっていたので、新しいパーティはすぐに見つかった。
彼らは、アメリオやボニートよりもレベルも高かった。
彼女もクエストのレベルが上がって、その場その場で求められることが違い、それに対応しなければならなくなった。
しかしそれを身につけて、さらなる向上を誓ったのだった。
ただ新しくメンバーになったリオとルイは女性関係がだらしなく、クエストに支障が出る事も多かった。
プライドも高く、このパーティは自分たちでレベルを上げて来たという誇りもあるので、彼女はあくまで被雇用者の立場だった。
「リーダーぶるな」
「好きになれない」
「ギャラの分、働け」
などといわれ、彼女のイライラは募った。
自分たちは正しいといわんばかりの態度に思わず愚痴も出た。
「自分の感覚を疑えよ! 力が足りてねえんだよ! バカが!」
そんなとき、飲食街で、アメリオとボニートと偶然出会った。
「おう! 元気か?」
「どうせ風俗でしょ、アンタら」
「うるせーわ」
「まあ当たらずといえども遠からずだけどな」
「?」
「旨い飯屋巡りしてるんだよ、オレら」
「へえ。どこが旨いの?」
「一緒に行くか」
食事をすることになった。
「お待たせしました」
店員が料理を運んでくる。
ひと口食べて、ミアがいった。
「あ、旨ッ!」
「だろ? せっかく稼いでるんだから、メシは旨いもん食おうと思ってさ」
「何だかんだいって、アンタら、ちゃんと生きてるよなあ」
「オマエも、新しい仲間と行けばいいじゃん」
「そうなんだけどさ…」
「どうなんだよ? 新しいパーティ」
「ランク高いトコに、後から入ると面倒くさい…」
「アハハ!」
「アイツら、女グセも悪くてさー」
「冒険者なんてそんなもんだろ!」
「オマエは、真面目すぎるからなあ」
ふと、アメリオがいった。
「これ、冒険者あるあるだけどさ、適当にやってるときは仲が良いけど、真剣にやり始めると仲が悪くなるんだよな」
「はあ?」
「考え方の違いもあるけどさ、冒険者なんて真面目にやっても意味ないだろ。楽しくやらねえと」
ボニートも同意する。
「真面目にやるなら、農民やってるわ!」
「魔術師は真面目なヤツが多いけど、剣士はそういうヤツが多いからな」
「ストイックに技術極めて、最強なだけの人生なんて、面白くないだろ」
聞けば2人は、冒険者になりたての頃、大所帯パーティでこき使われて逃げだしたことがあるという。
その街のギルドで干されて、この町で冒険者をやり直したそうだ。
「あんなヤツらにならねえぞ、ってオレらやって来たからな」
「アンタら、いったことなかったじゃん。そんなこと」
「聞かれなかったからなあ…」
思えば、彼らの過去についてなど考えたこともなかった。
食事が終わるころにいわれた。
「オマエ、ポーション作れただろ。少し分けてくれないか。金は友人価格だと助かるんだけど」
「いいよ。何? 前は使わなかったのに」
「まあオマエにいわれて、思うところもあってさ、今レベルの高いクエストを受けてるんだよ」
「へえ、大丈夫?」
「まあ、オレらなりのペースでやるわ」
そして、アメリオは、改めて彼女の目を見ていった。
「オマエもさ…」
「?」
「…ちゃんと向き合えよ。仲間には」
「わかってるわよ! そんなこと!」