Chapter1: LOST
「このまま死ぬなんて… 絶対にイヤ!」
有田美愛は大手の有力会社に就職した。
大手なら働き方改革もさぞ進んでいるだろうと思いきや、実際の拘束時間こそ短いが、資料作成に追われる日々。
先輩は立ち回りばかり上手く、新人に仕事を押し付けてくるだけ。
「有田さんなら、出来るよね」
自宅だと無限に仕事させても問題ないと思ってるのかしら…
もちろん美愛は、その言葉を出さなかった。
仕事量の多さを相談すると、先輩からいわれた。
「他の人はもっとやってるよ」
「仕事の処理が、下手なんじゃない」
「数こなせば、慣れてくるから」
先月買ったゲームをやる時間もない。
「打合せだの会議だのって、大人がアリバイ作りにやってるだけだろ」
その言葉も出さなかった。
そもそも新人の彼女に、解決できることではない。
「あの資料できてないの?」
ある日のことだ。
「今日こそは自分の時間を!」
と思っていたのに、先輩にリモート打合せでそういわれて、資料作りのためにと、自分の部屋でパソコンを開いたときだった。
彼女はめまいがして、意識が遠のくのを感じた。
「あ… このまま私… 死ぬかも…」
買ったゲームのことが、思い出された。
「あのゲーム… せっかく買ったのに…」
彼女は強く思った。
「このまま死ぬなんて… 絶対にイヤ!」