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幼馴染は安心する。けど、片方はそれ以上を望む

 ———同時刻。昼休み。

 

「んー……」


 日菜子は、友達である早苗と美月と机をくっつけてお弁当を食べていたが……時々ボーと何かを考えている様子であった。


「ん? 日菜子どしたの?」

「えっとね、今日は旭晴さんと弘香さん見かけないなぁと」

「それ、前もじゃなかった? たまたまでしょー」

「そうだったけど〜」

「あっ!」

「なんだよ、美月……。大きい声出してぇ……」

「そういえば、あさっちのクラスを通ったとき、弘香さんは熱で休み。あさっちは早退したって話聞こえた」

「先に言えよ〜!」

「ええ、弘香さんが熱!? 旭晴さんが早退!? 2人とも大丈夫かなぁ……」

「あさっちの方は、さっき早退したらしいよ。なんでもかなりの腹痛らしい」


 美月の言葉を聞き、日菜子はハッとする。


「旭晴さんは弘香さんを看病しに帰ったんだね」

「えっ、腹痛じゃないの?」

「それは……仮病じゃないかな?」

「えっ、まじ!?」

「日菜子、なんで分かるの?」


 驚く早苗と美月に、日菜子は確信を持った微笑みで言う。


「旭晴さんと弘香さんは……仲良しだから」





「まずは腹ごしらえってことで……たまごおかゆ作ってきたよ〜」


 弘香ちゃんは昼ごはんがまだということで、キッチンをお借りして作ってきた。

 

 土鍋を開けると、ほわぁと湯気立つ。中は、ごはんと溶いた卵を入れて煮た、優しい味わいのシンプルなたまごおかゆ。


「かき混ぜて冷ますからちょっと待っててねー」

「ん……ありがとう」


 弘香ちゃんがベッドからゆっくりと起き上がる。


 先ほど熱を測ったら、また高くなっていた。またすぐ下がると思うけど、タチの悪い熱じゃなければいいなぁ……。


「と……はい。おかゆ食べても良いよ」

「……食べさせて」

「………」

「食べさせて」

「あっ、うん。聞こえてるよ」


 今日も随分と素直だ。そもそも熱で体がだるいのだから食べさせないといけないか。


「ふうふう……はい、あーん」

「あー……」


 小さく開けた口に、たまごおかゆが乗ったレンゲを近づけて……パクリ。弘香ちゃんはもぐもぐと食べる。


「ん、美味しい……」

「良かった。食欲あって」

「……次」

「はいはい」


 弘香ちゃんが催促するたびに、たまごおかゆが乗ったレンゲを口に持っていく。弘香ちゃんはとろんとした瞳ながらも口はしっかりと動いていて……そして……ゆっくりながらもたまごおかゆを完食した。

 

「ありがとう旭晴……」

「僕は弘香ちゃんの"幼馴染"だからね!」


 当然だよ、とばかりに笑ってみせると弘香ちゃんもまた微笑み返して……段々と笑みが消えていった。


「弘香ちゃん? 気分でも悪くなったの?」

「……なんでもないわ」

「そう? 容器片付けてくるね。あと、新しい熱冷ましシート取ってくる」

「……うん」


 

 旭晴が階段を降りる音を聞きながら、弘香は呟く。


「幼馴染以上に進みたいなんて……私のわがままなのかしら……」

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